「治療はもういいです」…がん患者の最期に寄り添う「BSC」という考え方【在宅医が解説】

がんに対する積極的な治療ができなくなってしまったり、患者さんやその家族が治療を希望しなくなったときに、よく使われる言葉として「BSC(Best Supportive Care)に移行する」というものがあります。今回は、医療法人あい友会理事長の野末睦氏が、痛みの緩和だけではなく、生活の質(QOL)の向上にも役立つ「BSC」の具体的な内容について解説します。

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在宅医療の希望「BSC」とは?

がんに対する手術や抗がん剤投与などの積極的な治療ができなくなってしまったり、患者さんやその家族がそのような治療を希望しなくなったときに、よく使われる言葉として「BSC(Best Supportive Care)に移行する」というものがあります。

 

たとえば、診療情報提供書(紹介状)などに「多発骨転移に対して、抗がん剤治療を行ってきましたが、病状は進行し、今後はBSCの方針となり、退院の方向となりました。今後は貴院での在宅医療を希望されています」なんて書かれているのを目にすることもあるでしょう。

 

「BSCって何?」と思われる方は多いかと思います。私もそうでした。7年前に在宅医療に身を投じた頃、退院調整会議で病院の医師から「今後はBSCでいきたいと思います」なんて言われたときに、「それ、なんですか?」と尋ねたのを覚えています。

 

調べてみると、BSCとは腫瘍学の臨床試験分野で使われていた言葉で、「がんに対する積極的治療を行わずに症状緩和の治療のみを行うこと」と定義されています。

 

痛みの緩和だけでなく、生活の質(QOL:quality of life)の維持向上も含む概念だとされています。

 

しかし、実際の場面では先程のように、曖昧なニュアンスで「病院医療の一方的な撤退宣言」のように使われていることが多いのではないかと思われます。がんへの治療を目的として入院していることが多いので、BSCとなったら、退院の話をするのは仕方ないし、そうあるべきだと思います。

 

ですからBSCは在宅医療でこそ実施されるべき医療、ケアになります。そこには「痛みの緩和のみならず、QOLの維持向上」を目指すというコンセプトがとても大切になります。

 

ここでは、痛みの緩和ではなく、QOLの維持向上という意味で、在宅医療が果たす役割について、代表的な場面を見ていきます。

医療法人 あい友会 理事長

1957年生まれ。82年筑波大学医学専門学群卒業、91年筑波大学臨床医学系(外科)講師。
93年 ハーバード大学医学部マーサチューセッツ総合病院研究員を経て、2002年庄内余目病院院長就任。06年 庄内余目病院創傷ケアセンター長兼務。14年 あい太田クリニック、20年 あい庄内クリニック、21年 あい駒形クリニックを開設。現在 医療法人 あい友会理事長兼 あい太田クリニック院長。
国内の7割以上が常勤医1名の過酷な訪問診療の現状に対し、多人数の医師体制にすることにより多くの患者へ高質な在宅医療特有の専門医療を提供出来る新しいモデルを構築。

著者紹介

連載現役医師が語る「在宅医療」の現状

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