厚生労働省の人口動態統計(令和2年)によると、日本人のもっとも多い死因は「がん」で、その割合は約4人に1人です。また「最期は自宅で過ごしたい」と願いつつも、痛みなどに不安を抱え、実現できないまま亡くなる人が多いのが現状です。そこで、がんの痛みを抑える治療や副作用の注意点について、医療法人あい友会理事長の野末睦氏に解説いただきました。

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「最期は自宅で」と考える人へ…痛みや薬の問題は

在宅医療が比較的認知されるようになってきた昨今、がんが進行してきて、半年以内くらいに最期のときを迎えそうになってきたときに、最期の期間をどこで過ごすかの判断を、病院の医師から求められることが増えてきているのではないでしょうか。

 

いろいろな選択肢がありますね。今まで治療をしてきた病院や看取りをやってくれる施設、それとも緩和ケア病棟や在宅医を利用しながら、自宅で。

 

「最期のときは住み慣れた我が家で」と考えている人にとって、最も心配なことは、がんによって生じる「痛みについて」ではないでしょうか。

 

「今感じている痛みは、これからどんどん強くなってくるのだろうか。それに対して、有効な方法を自宅で講じることができるのだろうか。やっぱり、最後は痛みで七転八倒することになるのだろうか。最後はモルヒネを使うしかないのだろうか。だとしたら、いわゆる麻薬漬けになって廃人みたいになってしまうのだろうか。あるいは訳がわからなくなって、他人を傷つけたりしないのだろうか。」

 

次から次へとこのような不安が生じて、それを周りに聞くこともできずに、悶々とした日々を過ごすのではないでしょうか。ここでは、がんの痛みについて、基本的な性質、評価法、対処法などをお話しします。

がんの「痛み」は大きく分けて2種類

まず痛みの強さは、患者さん自身の自覚に基づいて、0から10の段階で分類し、10を分母とした分数で表記します。

 

ご本人が痛みを全く感じない状況なら0/10、想像できる最も強い痛みのときには10/10という具合です。

 

そしてがんの痛みの出現の状況は大きく二つに分けられます。持続痛と突出痛です。

 

持続痛とは、1日中ほぼ一定の強さで続く痛みのことです。そして突出痛とは、1日のうちに数回、持続痛の上に、更に急に増強する痛みのことです。

 

ですから、在宅医が診察に入ると、まずこの痛みの強さをお聞きします。1日中続く痛みはどのくらいですか? そして1日に数回襲ってくる痛みが強い時間帯の痛みの強さはどのくらいですか? それぞれを0から10までの数値で表してください。

 

すると患者さんは、痛みが強いときは8ぐらいで、比較的痛みが落ち着いているときは5くらいかなと答えてくれますので、カルテには、持続痛は5/10、突出痛は8/10と記載します。

 

在宅医が目指す痛みのコントロールのゴールは、持続痛も突出痛も0/10か1/10にすることであり、ほとんどの患者さんで達成されています。そして、このゴールを達成するための切り札が、「医療用オピオイド」と呼ばれているいわゆる麻薬です。

 

代表的なものはモルヒネですが、現在は、構造、作用が少し異なるいろいろな種類の医療用オピオイドが開発、提供されています。

 

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