「君、なんでもっと早くこの図を出さなかったのか」――。労働組合と会社の膠着した労使交渉を図解で説明すると解決への道が開け、図解の効果を実感した筆者の久恒啓一氏。その後、図解を仕事に取り入れるとすべてうまく回るようになったという。※本連載は、久恒啓一氏の著書『50歳からの人生戦略は「図」で考える』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「図解」を使うと仕事がうまく回る

私は団体交渉で会社側の末席に座り、交渉のやり取りを筆記するのも役割でした。

 

それぞれの組合の要求を受けて、会社として再回答するときは、関係者が集まって議論します。いろいろと意見が噴出して、なかなか結論が出ません。みんな沈黙してしまって、天井を見上げて、思案投首(しあんなげくび)の体です。

 

この状態を打開するため、私は図解を用いて回答案を提案してみました(図1)。

 

[図1]労使交渉

 

A組合の要求、B組合の要求、会社提示の受け入れ許容範囲の三つの囲みを描いて、重ね合わせるとその一部分が重なります。この重なった部分は無条件で受け入れてよい部分です。

 

それに加え、両労組が共通して要求している部分、さらにプラスアルファとして、A組合の要求の一部分、B組合の要求の一部分を受け入れてはどうかと図を示し、その下に要求を文字で書き入れて提案しました。

 

この図を見た経営側の交渉担当者たちは納得し、私の提案はとおりました。

 

「君、なんでもっと早くこの図を出さなかったのか」と上司にいわれたものです。私はこのとき、図解の威力を知りました。もし、これを口頭でいったり、文章に書いて提出したりしていたら、意図がよく伝わらず、受け入れてもらえなかったでしょう。

 

以来、図解を適宜使うことで、仕事がうまく回るようになりました。その成果が『図解の技術』となって結実し、次なる転身につながっていきました。

 

 

久恒 啓一

多摩大学名誉教授・宮城大学名誉教授

 

 

50歳からの人生戦略は「図」で考える

50歳からの人生戦略は「図」で考える

久恒 啓一

プレジデント社

「人生鳥瞰図」で仕事も人生もうまくいく! 大人のためのキャリアデザインの教科書。 私は日本人の「アタマの革命(図解)」と「ココロの革命(遅咲きの人物伝)」の二つをライフワークとしている──。 こう語るのは、…

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