(※写真はイメージです/PIXTA)

妻との間には2人の子に恵まれたものの、不仲のため別居。しかし、離婚に応じてもらえず、生活を共にするパートナーとは、事実婚状態のまま子をもうけ、40年が経過しました。1年前に戸籍上の妻が亡くなりましたが、不安なのは自分亡きあとの相続のことです。いまのパートナーの生活を守りつつ、円満に相続を行うことは可能なのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

正式な配偶者でなければ、相続税の課税額は高額に

先妻の子どもと事実婚の子どもはお互いに面識があるものの、父親亡きあとに円満な話し合いができるかどうかは未知数です。

 

 

筆者はまず、遺言書作成という方法もあると提案しました。すると山本さんは、

 

「遺言書に幸恵に財産の半分を渡すと明記しておけば、問題なく遺贈できるのではないでしょうか?」

 

と筆者に尋ねました。

 

たしかに遺言書に記すことで事実婚の妻に財産を遺贈することは可能ですが、相続税が問題となります。配偶者であれば財産の半分、もしくは1億6000万円までは非課税という特例があり、税制優遇されますが、事実婚の場合はそうした特例は適用外なのです。

 

山本さんの財産は自宅と金融資産で約3億円で、その大半が有価証券です。事実婚のパートナーへの遺贈となると、相続人である4人の子どもたちが負担する税額よりも高くなってしまいます。

税制上の優遇を受けるためにも、入籍は必須

上記の説明をしたところ、山本さんは覚悟を決めた面持ちで、前妻の1周忌が過ぎたタイミングで子どもたちを説得し、幸恵さんと入籍するといいました。
 

幸恵さんが戸籍上においても妻となったあとは、公正証書遺言を作成することになります。幸恵さんが配偶者となれば特例が生かせるなど、子どもたちにもメリットがあります。

 

「幸恵は長年私を支えてくれた大切なパートナーです。入籍すればメリットも大きい。これなら子どもたちは反対しないでしょう。本当に安心しました」

 

今回の相談者のように事実婚のパートナーがいる場合は、まずは入籍しておくことをおすすめします。また、先妻の子どもと事実婚の子どもたちが相続財産をめぐって争わないよう、遺言書の作成は必須だといえます。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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