(※画像はイメージです/PIXTA)

争族、離婚トラブル、労働問題…弁護士事務所には今日も様々な相談が舞い込みます。本連載では、弁護士法人アズバーズ代表の櫻井俊宏氏が、実際に寄せられたトラブル事例を紹介し、具体的な対策を解説します。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

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「生活費を支払ってください。」夫はキレて…

婚姻費用は、通常、調停を提起した月からもらえます。その旨を調停委員から聞いた夫は、案の定キレて調停委員を罵倒しました。調停委員の心証もかなり悪いようです。

 

夫は、弁護士に依頼して離婚の調停を提起するといってきました。しかし私の弁護士によると、夫のように不倫をした者は「有責配偶者」といって、私が納得しない限りは、離婚を認めてもらうことはなかなかできません。

 

私も最終的には離婚をせざるを得ないと思っていますが、夫にはしっかり責任をとってもらいたいです。各不倫相手への損害賠償請求も検討しつつ、弁護士と相談しながらじっくりと進めていきたいと思います。

 

1 仮差押とは?

 

こちらが権利を行使しようとした際、相手側は邪魔する法的手続を取ることが可能です。さらにそれを食い止める手続として「保全手続」があります。本記事では「仮差押」が該当しています(民事保全法)。

 

本件の不倫の慰謝料請求権のように、金銭の支払請求権を実効的なものにするため、その請求権が発生する可能性が証拠等から高い場合に行うことができます。

 

今回のケースを例としていえば、正式な裁判の前に仮差押を認めてもらい、狙った相手方の財産の権利を、相手方が動かせないようにするものです。請求権を行使する際、相手方の財産がなくなってしまうと困りますからね。

 

もし仮差押が、実際は認めるべきではないものだった場合の担保のために、狙った財産の20~30%前後の保証金をあらかじめ支払っておく必要があります。仮差押の内容が問題なければ、裁判後に返却してもらうことができます。

 

不動産の場合は、登記簿謄本に「仮差押」されている旨が記載されます。銀行口座の場合は、凍結されて利用できなくなります。

 

いずれにせよ、相手方が気づかぬうちに迅速に申し立てましょう。

 

2 婚姻費用分担請求の調停

 

婚姻費用分担請求の調停は、生活費を支払ってもらっていないときに、収入が少ないほうが、収入が多いほうに生活費を請求できる裁判所の手続です。自分から家を出て別居がはじまった場合でも請求できます。

 

裁判所で、一般の知識がある人から選任された2人の調停委員を中心に、30分交代ぐらいの入れ替わりで夫婦の合意に至るまで話し合う手続です。

 

とはいえ、裁判所において金額の相場感は両者の収入、子の人数・年齢等によって、下記の婚姻費用算定表のページのとおりに決まっています

 

※ https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html

 

調停委員もなるべくこの算定表の金額に近づけるように両者を説得します。話がまとまらない場合は「審判」という裁判類似の手続に自然と移行して、上記の算定表に近い形で裁判所により結論が提示されます。

 

次ページ「原因を作った側」からの離婚請求には、条件が…

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