(※写真はイメージです/PIXTA)

今回は、川口雅裕氏の書籍『年寄りは集まって住め』より一部を抜粋し、「老いの工学研究所」で実施した「人生の後悔は?」というアンケートの回答について解説していきます。

「余命半年、何をしたいですか?」…「勉強」と答えた

(3)「時代に翻弄された」

 

実感を持っている戦後の貧しい時代だったから、やりたいことができなかった(いろいろな事情でやらせてもらえなかった)という声も多くありました。かと言って、今の若い人たちを、うらやんでいるわけでもなく、自分たちはそれに比べて恵まれなかったと残念がっているわけでもありません。

 

読んでいると、むしろ、だからこそ(恵まれている時代に生きている)若い人たちには頑張ってほしいという気持ちが伝わってきます。

 

昔は、女というだけでダメだった、貧しくて進学できなかったし支援制度もなかった、留学はもちろん海外旅行も高根の花だった、学歴だけで与えられる仕事のレベルが決まっていた、都会で挑戦したくても地元に残らざるを得なかった。徐々に、そうではなくなっているんだから、チャンスを活かしてほしいというエールのような声です。

 

(4)勉強不足を痛感している

 

これは、男女ともにとても多くありました。

 

受験を含めた学生の頃の勉強もあれば、社会に出てからの学び、キャリアや宗教までその内容は多様です。

 

文化センターなどの講座の出席者が、かなりの割合で高齢者なのは、時間に余裕があるからだけではなく、高齢になると学ぶ意欲が高まるからだと言われていますが、その背景には、「もっと勉強しておけばよかった」という後悔が含まれているのかもしれません。

 

また、学べば学ぶほど知らないことの多さが分かるので、さらにその意欲が高まるとともに、もっと早く、若いうちに勉強しておけばという気持ちにもなるのでしょう。ある高齢者に「余命半年と言われたら、何をしたいですか?」と訊いたとき、即座に「勉強」と返されたときのことを思い出します。

 

「時代が変わっても、歳を重ねれば同じように変化すること」と、「同じように歳をとっても、生きてきた時代によって変化の仕方が異なること」があります。現代の高齢者も、歳をとってその昔のお年寄りと同じように変化してきたことと、生きてきた時代が異なるがゆえに昔の人とは違う変化をしていること、との両方があります。

 

「人生の後悔は?」の回答には、その両者が混ざっており、何度読んでも非常に興味深いものがあります。

 

また、質問にたくさんの記述をいただけたのは、同じ後悔をしないようにしなさいという若い世代への思いやりのようにも感じました。高齢者は「今の世の中は……」「今どきの若い者は……」と不満をこぼしながら、よくそのあとで「でも、そうなってしまったのは私たちのせいなのよね」とおっしゃいます。

 

はっきりとそうは言わなくても、向き合っているとそう思っておられることが伝わってきます。ここに挙げた「人生の後悔」は、自らの振り返りであると同時に、若い世代への申し訳なさも含まれているようにも読めるのです。

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川口 雅裕


NPO法人「老いの工学研究所」理事長。 1964年生。京都大学教育学部卒。 株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)で、組織人事および広報を担当。 退社後、組織人事コンサルタントを経て、2010年より高齢社会に関する研究活動を開始。約一万六千人に上る会員を持つ「老いの工学研究所」でアンケート調査や、インタビューなどのフィールドワークを実施。高齢期の暮らしに関する講演やセミナー講師のほか、様々なメディアで連載・寄稿を行っている。 著書に、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「速習!看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「実践!看護フレームワーク思考 BASIC20」(メディカ出版)、「顧客満足はなぜ実現しないのか」(JDC出版)、「なりたい老人になろう~65歳からの楽しい年のとり方」(Kindle版)がある。

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『年寄りは集まって住め』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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