【関連記事】相続対策としての「生前贈与」に潜む落とし穴【税理士が解説】
「特定贈与財産」として贈与するための適用要件
夫婦の間で贈与する財産に配偶者控除を適用して特定贈与財産とするためには、次の要件を満たす必要があります。
・居住用不動産またはその取得資金の贈与であること
・翌年3月15日までに入居してその後も引き続き居住すること
これらの要件の具体的な内容と注意点を説明します。
婚姻期間が20年以上あること
配偶者との婚姻期間は20年以上あることが必要です。
婚姻期間は戸籍上の婚姻期間に限られ、いわゆる内縁関係の期間は含みません。年数を数えるときは、1年未満の端数は含みません。たとえば、婚姻期間が19年9か月の場合は19年とみなします。
居住用不動産またはその取得資金の贈与であること
贈与を受ける財産は、自分が居住するための日本国内の不動産またはその購入資金であることが必要です。
不動産は土地のみまたは家屋のみでも構いません。
翌年3月15日までに入居しその後も引き続き居住すること
贈与を受けた住宅(または贈与を受けた資金で取得した住宅)に、贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居して、その後も引き続き居住することが必要です。
なお、贈与後も引き続き居住する。ということが要件となっているため、贈与後に売却をしてしまうと適用が認められなくなる可能性があるため注意が必要となります。
特定贈与財産は贈与税がかからなくても申告が必要
贈与税が0円でも申告は必要
夫婦の間で贈与する財産に配偶者控除を適用して特定贈与財産とするためには、「1.特定贈与財産として贈与するための要件は婚姻期間20年以上」でお伝えした3つの要件以外に、贈与税の申告書を税務署に提出する必要があります。
贈与税の配偶者控除は上限が2,000万円です。基礎控除の110万円とあわせて、夫婦間の贈与が2,110万円以下であれば贈与税はかからないことになります。
しかし、贈与税がかからないとしても、贈与税の申告は行わなければなりません。申告をしなければ、配偶者控除が適用できないばかりか、申告する義務があるのに申告をしていないとみなされ、罰則の対象となります。
申告のときの必要書類
贈与する財産に配偶者控除を適用して特定贈与財産とするためには、贈与税の申告のときに次の書類を添付します。
・贈与を受けた日から10日を過ぎた日以後に発行された戸籍の附票の写し
・贈与を受けた不動産(または贈与を受けた資金で取得した不動産)の登記事項証明書
・贈与を受けた不動産(または贈与を受けた資金で取得した不動産)に入居した日以降に発行された住民票の写し(戸籍の附票の写しと同じ住所であれば不要)
・不動産の贈与を受けた場合、その不動産の固定資産評価証明書など評価額がわかる書類
贈与税の申告の期間は、財産を受け取った年の翌年2月1日から3月15日までです。贈与を受けた人の住所地の税務署で申告します。
同じ配偶者からの贈与は1回だけ
同じ配偶者からの贈与は、1回に限り配偶者控除を適用して特定贈与財産とすることができます。
たとえば、自宅を半分ずつ2年にわたって贈与した場合、配偶者控除を適用して特定贈与財産にできるのは初めの1回分だけです。
贈与があった年に贈与した人が亡くなったとき
贈与があった年に贈与した人が亡くなった場合は、通常、贈与された財産には贈与税ではなく相続税が課税されます。しかし、特定贈与財産には贈与税も相続税も課税されません。
特定贈与財産は贈与税の配偶者控除を適用した財産ですが、贈与があった年に贈与した人が亡くなった場合は、まだ贈与税の申告ができておらず、配偶者控除は適用できていません。
このときは、贈与税の配偶者控除を適用したと仮定して特定贈与財産を定めることができます。ただし「2-1.贈与税が0円でも申告は必要」でお伝えしたように、贈与税の申告をする必要があります。
特定贈与財産の贈与を受けかつ、相続財産に対して相続税を納める必要があれば、贈与税と相続税の両方の申告を行うことになります。
注目のセミナー情報
【減価償却】11月20日(水)開催
<今年の節税対策にも!>
経営者なら知っておきたい
今が旬の「暗号資産のマイニング」活用術
【国内不動産】11月20日(水)開催
高所得ビジネスマンのための「本気の節税スキーム」
百戦錬磨のプロが教える
実情に合わせたフレキシブルな節税術