前回に引き続き、社長のための相続・隠し事対策について解説します。今回は、後継者がいない場合の事業承継の選択肢「M&A」「廃業」について見ていきます。

M&Aには株主総会の「特別議決」が必要

社長にとって一番望ましい選択は、信頼できる後継者に事業を任せることでしょう。ただ、少子高齢化が進む現代では後継者が見つからない企業も増えています。中小企業が廃業する理由の中でも後継者難は非常に大きな割合を占めていて、今後もその割合が改善する見通しは立っていません。

 

後継者が見つからない場合は、事業譲渡等によるM&Aか廃業を選択するしかありません。「事業譲渡したくても買い手が付かないのでは?」と考える社長が多いのですが、中小企業の中にも高い技術力や営業ノウハウを持つ会社は少なくありません。そういった会社は社長が認識している以上に高く評価されている可能性が十分あります。

 

M&Aなら従業員が失業してしまうリスクを抑えられますし、売却代金が入ってくるので社長の家族にとっても生活の安定につながります。

 

ただし、事業譲渡には株主総会での特別決議が必要です。オーナー社長が持つ株式の割合が低い場合や名義株が大量にあるケースでは、株主総会の前に株主の意向を確かめたり、株式を買い取ったりする対策が必要です。

 

また、売却によって利益が出た場合には多額の所得税が課税される点も気を付けておきたいところです。

 

さらに、納税後に残ったお金を保有したまま亡くなれば相続税も課税されるので、短期のうちに多額な納税をすることになってしまいます。節税するにはある程度の期間と知識が必要ですから、事業譲渡を決める前に顧問税理士に相談するのがよいでしょう。

株式会社の廃業には複数の手続きが必要

M&Aが不可能であれば残された選択肢は廃業しかありませんが、株式会社の場合には一定の手続きを踏む必要があります。まず株主総会で特別決議による解散決議を行います。

 

その上で解散登記を行い、会社財産の清算を実施します。清算が終了したら清算結了の登記を行って会社は正式に消滅したことになります。税務の面では解散確定申告や清算事業年度の確定申告などを行う必要があります。

本連載は、2015年10月27日刊行の書籍『妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

佐野 明彦

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな男性も妻や家族に隠し続けていることの一つや二つはあるものです。妻からの理解が得にくいと思って秘密にしている趣味、誰にも存在を教えていない預金口座や現金、借金、あるいは愛人や隠し子、さらには彼らが住んでいる…

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