「バイオレットライト」の近視抑制への有効性
近視の抑制に関し、慶應義塾大学医学部眼科学教室の「バイオレットライト(以下、VL)仮説」が注目されています。私、吉田統彦もこの理論に注目し、平成31年4月12日の衆議院厚生労働委員会で当時の根本厚生労働大臣に対し、近視予防及び抑制対策に関する質問を行いました。
太陽光を直接見ると重篤な網膜障害を起こすので禁忌ですが、屋外活動での近視抑制効果は、VLが存在する環境下で活動することが要因であるとするのがVL仮説です。
地上に届く太陽の光は、人間の目が感知できる「可視光」、感知できない「可視光以外(紫外線、赤外線など)」の大きく2つにわけられます。太陽の光はさまざまな波長の集合体で、プリズムのような分光器で分解すると、虹のような赤から紫までの色が表れます。VLとはこの中の紫色の光で、波長は360〜400nmの領域です。太陽光には豊富に含まれていますが、蛍光灯やLEDなどの室内の光にはほとんど含まれていません。
VLが近視進行を抑制するメカニズムを追究するため、慶應義塾大学の研究チームは、近視に関与する遺伝子に対するVLの影響を調べました。そのうちの1つが、近視の進行を抑制すると考えられている遺伝子「EGR1」です。研究の結果、VLが目に入るとEGR1が活性化されることがわかったのです。
実験近視モデルとして世界中で広く用いられているヒヨコを使用し、VL環境下で生活する群とそうでない群にわけて研究したところ、VL環境下で生活する群で有意に近視の進行が抑制されました。
また、VLの一部をカットすると考えられるコンタクトレンズの装用は子どもの眼軸長の伸長(近視の進行の原因となる)に有意な影響を与えます。つまり、VL影響下での活動による近視抑制には続々とエビデンスが提唱され、今後更なるエビデンスの蓄積が期待されます。