「すべて肩代わりしてほしい」…業者に丸投げクリニックの実態 (※写真はイメージです/PIXTA)

クリニックにとって、レセプトチェックは毎月月初の一大イベントです。クリニック経営を支える重要な仕事ですが、業務を行えるスタッフが限られていることから、「業者にすべて任せたい」というクリニックも少なくありません。しかし利用方法によっては、クリニック側に思わぬデメリットをもたらすことをご存じでしょうか。医療機関コンサルが解説します。

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「レセプト業務ができるスタッフ」が退職してピンチ

レセプト担当者が退職したので、レセプト業務をこなせる人がいない…。クリニックではこういった場合にレセプト請求代行業者の活用を検討されるかと思います。電子カルテが医療事務の基幹システムになっている昨今では、医事の知識が乏しくても対応できるものなのですが、個人の能力に依存した仕事を踏襲しているように見受けられます。

 

業界の現状として、クリニックのレセプト代行をサービスとして提供できる業者は少なくなっています。各クリニックにピンポイントで派遣できる人材も限られているので、基本的に「クリニックにスタッフを派遣してもらう」形は難しいでしょう。私たちも含め、請負契約形式で仕事をする業者が大半だと思います。

 

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レセプト業者が「できること」「できないこと」

では、レセプト請求代行業者がなにをするのか、簡単にご説明しましょう。

 

レセプト請求代行業者の仕事は、ドクターがカルテ入力を完了した時点から始まります。業者がレセプトをチェックし、チェック内容をドクターにお戻しします。その内容にしたがって修正を加えたレセプトを支払機関に請求する、というのが大まかな流れです。

 

レセプトチェックにより残業が増える主な理由は、一部「ドクターにしか解決できない問題」があることです。初診の算定開始日や主病名をつけたり、どう算定するかを判断したりするのは「ドクターしかやってはいけないこと」なのです。「仕事が増えて大変」と感じられるかもしれませんが、コンプライアンス上、遵守すべき基本ルールです。

 

一方、「医事スタッフが解決できる問題」については、レセプト業者が対応します。処方薬と病名、検査と病名漏れのチェックおよび修正は、電子カルテのチェック機能と作業者の目視による点検で、問題のないレベルまで仕上げてもらえるでしょう。電子カルテの場合、二重算定をするとエラーメッセージが表示されるので、過剰請求の心配もありません。

 

【主な請求漏れリスト】

1.処方薬と病名、検査と病名の漏れ:電子カルテの初期設定を変えることで、それぞれのひも付けを行います。

 

2.算定漏れ:カルテ入力が済んでいれば、請求可能な項目については漏れることはありません。算定要件を満たしていれば、加算項目の算定について質問がポップアップされるようになっています。

 

3.詳記(コメント)漏れ:テンプレートを用意しておくことで作業時間は短縮されますし、精度も上がっていきます。

 

同じミス(修正)を繰り返さないためになにができるか、という意識を常に持っておくことが大切です。修正内容については、次回以降はチェックがかからないように一つずつ対策を講じていきましょう。修正事項を減らし、レセプト業務に要する作業時間を少しでも減らすことを医事スタッフのKPI(重要業績評価指標)に設定することも検討してみましょう。

よくある「レセプト業者に丸投げ」…実はリスク大

人材不足に悩んでいるクリニックにとって、多少コストがかかっても、レセプト請求作業を外注するメリットは大きいと感じられているようです。業務負担を減らすことで患者対応に集中できる等のメリットはありますが、リスクを伴うことも覚えておいていただければと思います。

 

レセプト経験を有するスタッフの採用が難しいこともあるのか、私たちに依頼されるクリニックにはレセプト業務の経験者がいないことが多く、「すべての業務を肩代わりしてほしい」というニーズが大多数を占めています。しかしながら、そのニーズにお応えすることはできません。もちろん丸ごと請け負うことはできるのですが、それがクリニックにとってプラスにならないと考えているため、お断りしているのです。

 

理由は主に2つあります。①レセプトの作成から入ると、レセプトのチェックが甘くなりかねない、②私たちの業務品質をクリニックのスタッフが検収することができなくなるからです。

 

「レセプトを作成する」ことと、「レセプトをチェックすること」は業務内容も作業工程も異なります。日々の受付業務の中でチェック、修正できる内容については受付スタッフで完結させましょう。多忙であるがゆえに漏れてしまったコメント等はレセプトチェック時に処理しますが、できる限り会計時もしくは診療終了後には完成に近い形まで仕上げるのが原則です。

 

特定疾患療養管理料等のXX指導(管理)料は、ドクターの判断により算定される項目です。主病名についても同じで、処方されている薬剤からある程度の病名の推測はできますが、事務方(特に弊社のようなレセプト業者)の判断で修正追記する内容ではないからです。

 

第三者の視点を取り入れることで業務の品質を向上させられますが、依存し過ぎると、自院でのチェック機能そのものがなくなり、医事スタッフが退職する以上に大きなリスク要因となってしまいます。レセプト業者には「自院ではできないところだけ頼む」といった形でトータルの事務コストが削減できるようにかしこく使っていただければと思います。

新人パートスタッフにレセプト業務を教えた結果…

レセプト業務を外注しつつ、新人のパートスタッフ(Aさん)を「仕事ができる人材」にまで育てたXクリニックの例を紹介しましょう。

 

30代のAさんはこれまで飲食店を中心に接客業をしていたので、クレーム対応や患者とのコミュニケーションはそつなくこなしています。しかし、医療事務の経験はないので、レセプト業務については一から学んでもらわなければなりません。

 

幸い、経験者が退職するまでの一ヵ月間はOJTができたので、必要最低限の内容に絞り、Aさんに伝えてもらいました。その結果、とりあえず「作業(単純労働)」レベルの業務はひととおりこなせるようになりました。前任者が細かい業務マニュアルを作成してくれていたおかげで、未経験者でも仕事が覚えやすくなっています。

 

一方、従前と比べて業務の質が低下したレセプトチェック業務は外注したので、クリニックとしては経験者が退職したことによるダメージを最小限に留められたといえるでしょう。

 

コスト面でも改善効果が見られました。社会保険も含めるとパートスタッフ2.5人分の人件費がかかる正社員が退職し、パートスタッフを雇用したことで、パートスタッフの1.5人分人件費を削減することができたのです。レセプト業務を外注したのでコストは増えましたが、日々の業務は未経験のパートスタッフでもこなせる「作業」に落とし込めたので、トータルコストを20%程度削減することができました。

 

レセプト業務に限ったことではありませんが、仕事は「単純労働(作業)」と「知的労働」に分けられます。「人を選ばない仕事」と「人を選ぶ仕事」とも言い換えられるでしょう。電子カルテや自動会計システムにより業務の機械化が進んでいる今、Xクリニックのように業務を「単純労働」にすれば、未経験者でも仕事ができるようになり、人件費も抑えられます。その中で「もっと給料を稼ぎたい」と考えるスタッフには、「知的労働を身に付ければ、給料が上がる」給与体系やキャリアパスを整える等して、インセンティブを高めましょう。

 

クリニックの経営者として考えるべきなのは、業務を標準化し、「単純労働」と「知的労働」に仕分けることです。

 

実務経験のある医事スタッフの採用が難しい昨今、未経験者を仕事ができる人材に育てていくことを前提に採用活動を進めた方がよいでしょう。

 

人材派遣会社の利用や業務の一部を外注すること(アウトソーシング)によりクリニックのマンパワー不足問題を解消することはできますが、その効果は一時的です。基本的にはクリニック改革を進め、院内ですべてを完結させられる「地力」を養った方がよいというのが私の考えです。

 

 

柳 尚信

株式会社レゾリューション 代表取締役

株式会社メディカルタクト 代表取締役

 

 

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株式会社レゾリューション 代表取締役
株式会社メディカルタクト 代表取締役 

会計事務所系コンサルティング会社にて、医療機関のコンサルティングを行う。

経営戦略立案、管理会計、人事労務ほか事業承継(M&A)も手掛ける。

また、各地区医師会やハウスメーカー、医療機器メーカー等で、セミナー講師として講演を行い、日経メディカルオンラインでコラム「開業の落とし穴」を第51回まで執筆するほか、日経ヘルスケアで「診療所経営駆け込み寺」を連載する等、セミナー講師・原稿執筆の実績も多数。

著者紹介

連載クリニック経営はレセプトが9割

※本連載は、柳尚信氏の著書『クリニック経営はレセプトが9割』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

クリニック経営はレセプトが9割

クリニック経営はレセプトが9割

柳 尚信

幻冬舎メディアコンサルティング

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