(※写真はイメージです/PIXTA)

近未来のロジスティクスは、AIを活用した需要予測が重要な意味合いをもつと、物流コンサルタントを手がける株式会社オンザリンクス代表の東聖也氏はいいます。業界の垣根を越えて需要予測を共有するための「プラットフォーム」の構築が進んでいる現在、近未来の物流はどのような姿に変化していくのか、みていきましょう。

本業では競争しながらも「物流」は協業する時代へ

もう一つの動きとして、物流業界では今後、共同配送が進んでいくと考えられます。

 

かつてピーター・ドラッカーが語っていた「暗黒の大陸」ともいうべき社会が今まさに出現しています。明治維新や戦後の混乱期、産業革命に匹敵するような大変化が生まれようとしているのです。

 

ドラッカーに「暗黒の大陸」とされた物流に光明を見いだすことで、事業を構想する企業は間違いなく勝者になれる時代だといっても過言ではありません。

 

物流業界は今「超人手不足」でモノを運べない時代の真っただ中にいます。しかし、物流業界は今が最高の時代だといえます。

 

なぜなら、現状のクライシスからの脱却を模索するなかで、今後利用が検討されるさまざまな最新テクノロジーを駆使する業界の一つになるからです。そうしたテクノロジーを効果的に活用する構想力を磨けば、ビジネスチャンスが無限に生まれてくるはずです。

 

産業革命は18世紀半ばに英国で始まりました。それ以降、250年の産業社会は常に「more(もっと)」「better(より良く)」を追い求めてきました。「より安く」「より速く」「より多く」を目標に世界の産業が発展してきたわけです。

 

そのような時代は、比較が可能な世の中でほかと比較することで自分の価値を創造してきたといえます。しかし、これからの時代は違います。比較対象が存在しない、見えない世界に迷い込んでいくことになります。

 

インターネットの普及によって、世界は国境のない一つの大舞台となりました。2045年にはAIが人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)に到達するといわれています。こうした大変化の時代には、これまでの常識が通用しなくなります。これまでと同じパラダイムで行動してはならないのです。

 

これまであったモノを「もっと、より良く」と改善を試みてもうまくいかなくなっていることは、多くの経営者が実感しているはずです。既存の競争原理のもとで事業を構想しても「超人手不足」の危機を乗り越えることはできないのです。

 

物流リソース不足の問題を議論する際に必ずといっていいほど出てくるのが共同配送です。最近では、同業他社(競合同士)による共同配送が脚光を浴びています。企業間の共同配送については、以前からその有用性は高く評価されているのですが、その割に事例が非常に少ないのが実情です。

 

共同配送が広まらない一つの要因として、物流会社主導での提案が慣例となっていることが挙げられます。実際に運ぶモノの上流のデータは各荷主が保有しています。荷主が主導となって共同配送を運営する仕組みがなければ、なかなか広まらないはずです。

 

ただし、荷主同士で進める共同配送もさまざまな問題が発生します。例えば、荷主ごとに配車システムを保有している場合は、どちらの配車システムを利用するのか、どうやって出荷情報を統合するのかといったことが問題になります。

 

仮にシステムとデータ連携の問題が解決しても、費用の分配はどうするのか、運送会社との契約はどうなるのかといった、さまざまな検討課題が持ち上がります。結局どちらも途中で疲れてしまい、共同配送の話が頓挫したというのはよく聞く話です。

 

とはいいつつも、競合同士による共同配送が少しずつでも進み始めていることはたいへんに良い流れです。

 

共同配送を進めるにあたっては、いくつかポイントがあります。自社の物流の概要が整理できていない状態で荷主同士が共同配送の検討を進めると、あとあと条件が折り合わず結局失敗することになります。まずは共同配送の相手を探す前に自社の物流の概要をしっかりと整理することが大切です。

 

例えば下記の図表のように荷物、納品先、波動、車両については最低限情報を整理して、相手と情報交換をすることも有効です。

 

[図表]共同配送を進める前に確認しておく情報

 

また、共同配送を検討する際、一度にすべての商品、すべての納品先について検討を進めようとする企業を見かけますが、それではうまくいきません。専任のコーディネーターがついている場合などは別ですが、荷主同士や物流会社の紹介でスタートする場合は、スモールスタートがオススメです。

 

納品先のエリアや商品を限定するのはもちろんですが、まずは1パレットから載せてもらう方法も有効です。1パレットであれば、どちらの荷主にとってもリスクはほとんどありません。そして1パレットから3パレット、10パレットと少しずつ増やしていけばハードルが低くなります。

 

近未来の物流では、ICTの活用により出荷情報が特定の場所に集約されます。物量が集約されれば物流は効率化されます。物量を集めるためには出荷情報を集めることになります。

 

集約された出荷情報をベースに共同配送が最適にシミュレーションされ、荷主主導でも、物流会社主導でもない第三者、おそらくAI主導による世界規模の共同配送プラットフォームが構築されていくことでしょう。

 

 

東 聖也

株式会社オンザリンクス

代表取締役

 

 

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※本連載は、東 聖也氏の著書『WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

東 聖也

幻冬舎

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