そもそも、現在の米国は、ゼロ金利政策+量的緩和(QE)といった超金融緩和政策の見直しに動く見通しとなっているわけですが、かつて一度だけ経験したリーマン・ショック後の超金融緩和見直し局面では、緩和政策転換の具体化が近付くと、米2年債利回りは、ゼロ金利政策の上限、0.25%を大きく上回る動きとなりました。
以上のように見ると、9月FOMCを受けて強まった「テーパリングが年内に開始される」といった見通しが大きく変わらない限り、米2年債利回りが0.25%を大きく下回る可能性は低いのではないでしょうか。
ここまで述べてきたことを少し整理します。
・米ドル/円も、それと連動する米金利も、長く続いてきた小動きを上放れたことから、当面は下落が限られる可能性が高いのではないか。
・米ドル/円は、下がっても110.5円を大きく下回る可能性は低く、米金利上昇を手掛かりに一段高を模索する。
ちなみに、9月の米ドル/円値幅は4月以来、5ヵ月ぶりに3円近くまで拡大しました。今年の米ドル/円の月間値幅は、小幅な場合は2円弱、よく動いたときは3円以上になります。これを参考にすると、米ドル/円の10月の予想は、110.5~112.5円がコア・レンジ、大きく動いた場合は110~113円といったイメージが基本になるでしょう。
NYダウは最大で5%以上の下落…米国株の下落を考える
こういったなか、少し気になるのが米国株の下落です。NYダウはこの間の高値である3万5600米ドルから、一時3万3000米ドル台まで、最大で5%以上の下落となりました。120日MA(移動平均線)など、短期のMAを大きく割り込む動きとなったのです(図表4参照)。
昨年3月「コロナ・ショック」の世界的な株価大暴落が一段落した後から続いてきた株高トレンドは、基本的には120日MAなど短期のMAにサポートされるなかで展開してきました。そんな120日MAを大きく割り込むようなら、テクニカルには株高トレンド変調の可能性が注目されるでしょう。
ところでこの米国株の下落については、中国大手不動産開発会社のデフォルト懸念や、米国債のデフォルト懸念などが材料になっているといった見方が普通です。それらとは別に、テクニカルな影響もあるかもしれません。
NYダウについて、120日MAからのかい離率を見ると、6月から9月にかけて、2~5%といった3%程度の狭いレンジでの小動きが3ヵ月近くも続きましたが、9月上旬ごろからそれを下放れたようにも見えます(図表5参照)。長く続いた小動きで蓄積されたエネルギーが、レンジ下放れにより下落方向に発散し、下落要因に過敏に反応しやすくなっている可能性があるでしょう。
長く続いた小動きを下放れた場合、基本的には、当分は上がったとしても元のレンジの下限を超えられないものです。元のレンジの下限は120日MAを2%上回った水準なので、足元では3万5千米ドル程度といった計算になります。
以上見てきたように、米ドル/円は、米国株が1割以上といった具合に大きく下落する場合、それに連れて下落する傾向があるので、米国株の動向に注目すべきだといえるでしょう。
吉田恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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