(※画像はイメージです/PIXTA)

年収の多い医師は、離婚の際に多額の財産分与に関する問題を抱えることがある。溝上医師(仮名・65歳)も、妻の咲子(仮名)の不貞行為により離婚話が進み始めたものの、財産分与の件で争いが続いた。さらに、医療法人制度による思わぬ弊害も受けていた。弁護士の渡邊泰範氏が携わった医師の離婚問題から、医療法人制度の弊害について紹介してもらう。

悲劇のはじまり

社団医療法人には、社員総会を設置する必要があります。社員総会を構成する社員とは、社団医療法人の構成員であり、いわゆる従業員のことではありません。株式会社で例えるなら、株主に相当します。

 

社員の人数は法律上の規定はありませんが、厚生労働省のモデル定款第26条の備考欄に「社員は3名以上置くことが望ましい」との記載があります。ほとんどの都道府県において社員が3名を下回ることは医療法人制度の趣旨に鑑み好ましくないとされ、行政指導の対象となるようです。溝上医師の社団医療法人でも、設立以降、常に3名以上の社員をおいていました。

 

もっとも、社団医療法人とはいえ、実質的に家族経営の場合には社員を親族で固めることが多いようです。溝上医師の社団医療法人でも、親族を社員としていました。溝上医師が承継した当時は、溝上医師のほか、溝上医師の母、叔父が社員でした。溝上医師の母が高齢になってからは、溝上医師のほか、妻の咲子、2人の子供を社員にしました。ところが,このように社員を変更したことが、溝上医師の悲劇のはじまりでした。

1円すら出資をしなくても社員になれる

社団医療法人の最高意思決定機関は、その社員によって構成される社員総会です。社員総会は、株式会社の株主総会に相当します。株式会社の株主総会においては、株主は原則として、1株について1個の議決権を有しています。そのため、株主数ではなく、株式数が重要です。すなわち、多数の株式を有している株主の言い分がとおりやすく、株式数によっては、1人の株主が全てを決定することもできます。

 

一方、社団医療法人における社員は、1人1個の議決権を有するとされています。平成19年3月31日以前に設立認可申請された社団医療法人では、社団医療法人に出資した者は、その出資額に応じた持分を有していましたが、社員の地位は持分と結合しているわけではありません。持分を全く有しない社員も存在し得ます。すなわち、社団医療法人では1円すら出資をしなくても社員になることができ、出資している社員と同様に1人1個の議決権を有しているという特徴があります。ここが、株式会社の株主との大きな違いです。

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