親の生活費を子が代わりに負担…相続はどうなる?
相続実務を行うなかで、「亡くなった親の医療費その他の生活費を負担していたのですが、相続財産から引けますか」という質問を受けることがしばしばあります。
コロナ禍においては、特に高齢者は銀行へ頻繁に足を運ぶことは躊躇われるでしょうし、また、要支援・介護状態にあったり入院していたりする場合には自身で支払手続きを行うことは難しいですから、様々な事情により子が代わりに親の諸費用を負担することは珍しくありません。
「相続財産から引けるかどうか」に対する答えはあくまでケースバイケースということになりますが、今回は子が代わりに支払うにあたって留意したいことについて、残念ながら良い備えができていなかった事例を参考に説明いたします。
【事例】
被相続人:父
相続人:長男(父と同居)、長女(父と別居)
相続財産:不動産(自宅・畑)8,000万円、株1,000万円、預貯金1,000万円
《備考》
父の年金は月10万円程度と少なかったため、固定資産税・医療費・介護費用などを含めると生活費を年金のみで賄うことはできませんでした。
父の金融資産はそれなりにあったものの取り崩していくとあっという間になくなってしまうことを忍びないと思った子供たちは、長年に渡って父に係る費用を代わりに支払うことを日常的に行っていました。
代わりに支払った費用は後で父から返してもらおうという立て替えの認識もなかったため、どのような費用を、いつ、いくら支払ったかについてまったく記録をしていませんでした。
相続発生時の相談内容
代わりに払った費用の総額はおそらく1,000万円を超えているため、父の費用を父の預貯金から支払っていればなくなっていたはずなので預貯金の1,000万円は除外できないものか、ということでした。
相談内容についての検討
まず、相続発生時において父の名義として預貯金が存在している以上、基本的には「あるもの」を「ないもの」として処理することはできませんので残念ながら預貯金を財産から除外することはできません。
次に、もし子供たちが代わりに負担した費用が立て替え払いであったのであれば、その立替金は父の債務として相続財産から控除することができますが、本事例では前述のように立て替えていたという認識がなく、具体的な支払内容・時期・金額について特定することができない状況であったことから債務として控除することもできないという判断をせざるを得ませんでした。
代わりに支払った費用は子供たちから父への贈与と考えられることになります。
なるべく父の生活費はまず父の金融資産から支払うべきであったこと、もし子供が代わりに支払うのであれば基本的には立て替えとしてその記録と関係書類の整備をしておくべきであったことが反省点です。
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