入念な確認のうえ、相続税を申告
登場人物は、被相続人(夫)と相続人が2名、配偶者である妻と長男(別居・既婚)となります。
非常に心配性な妻が向き合う相続税申告
被相続人はこれまで会社勤めであり、所得税の申告を行う必要がなく、税理士との付き合いも一切なかったため、配偶者である奥様も税金についてはよく分からなくて怖いという印象しかありませんでした。
しかし葬儀の際、親身な方から、年金等の事務手続きについて「もしかしたら相続税の申告義務が生じるかもしれない」とより知らされました。
――そもそも相続税ってどのくらいかかるの?
――どういう人が申告しなくちゃいけないの?
――税理士って知り合いいないけど、どうやって探すの?
疑問だらけで困り果てていましたが、葬儀社の方から司法書士や税理士を紹介してもらうことになりました。税理士と面談し、財産の情報を伝えていくなかで、やはり申告義務があることが判明。10ヵ月という期限内で分割方法を決め、申告をしなくてはいけませんでした。
税理士の費用の相場もよく分からない状況でしたが、他にあてもなく、言われるがままとりあえず依頼しました。不動産、有価証券、預金、保険金、葬儀費用、戸籍謄本、印鑑証明書等々の様々な書類を準備しなくてはいけない事実に圧倒されてしまいました。亡くなった悲しみに暮れる余裕もなく、こんなにもやることがあるなんて……と途方に暮れていました。
夫婦で築いてきた財産は「名義財産」に
なんとか資料も集め、税理士が計算してくれた結果報告を受けました。相続税の税金は本来あるが、配偶者が財産を取得することになれば税金はかからない、「配偶者控除」という制度を適用してくれるという話を聞き安心できました。
しかし、専業主婦である奥様は、旦那様の銀行口座から別口座にお金を移動させ、そこから生活費等を上手くやりくりし、残った分のお金を奥様自身の口座に貯めていました。コツコツと努力して貯蓄した結果、相続の際には数百万円のお金を貯めることができました。
「こんなにも自分が頑張って貯めたお金だから、このお金は自分のものでは……」という思いもありましたが、夫婦であっても別々のお財布とみなし、計上する必要がある旨を税理士から聞き、しぶしぶ名義財産として計上することにしました。
名義財産として計上しても、奥様が取得することになれば税金はかからないことになるということもあり、感情的にはいまいち納得できない部分もありましたが、税務署から後で指摘されることだけは避けたいという思いがありました。
そのため、税理士に対して亡くなった時点で取引のあった被相続人の過去の預金通帳も全部提供。配偶者名義の預金通帳も念のため渡し、後々、何か問題がないようにお金の動きをチェックしてもらいました。税務署に指摘されるような項目の洗い出しや処理についても入念に確認して、無事に10ヵ月の期限内に申告をすることができました。
また、相続税の申告にあたっては、税務調査が入らないように書面添付制度も活用し、万全の準備の上で申告を終えました。
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