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売り手としてスモールM&Aを成功させるには、留意しておくべき重要なポイントがあります。一度ミスしてしまうと、以降もリカバリーできなくなるケースも多いため、慎重な対応が必要です。よくある失敗事例とともに解説します。※本記事は『スモールM&A実務ハンドブック』(五十嵐次郎著、中央経済社)より抜粋・再編集したものです。

トップ同士の信頼関係が築けないと、交渉は困難に

スモールM&Aの特徴として、買い手との信頼関係に基づいた友好的M&Aが特徴です。双方トップ同士がトップ面談などを通じて、相互に理解し信頼関係を構築して、本件M&A取引(譲渡・譲受)の意思決定を行うことが可能です。売り手(企業オーナー)も、トップ面談を通して、消極的・受動的な態度ではなく、主体的かつ意欲的に自社の事業を積極的にアピールし、熱意をもって事業継続やその将来性、従業員の雇用維持などを訴えることが重要です。

 

[失敗例]

・スモールM&Aであるにもかかわらずトップ面談が実施できず、あるいは短時間で形式的な面談に終始してしまうなど、トップ同士の信頼関係の形成構築が進まない場合、以降の交渉において、双方の希望や条件を主張し合う条件交渉に陥ってしまい、疑心暗鬼のまま隘路に陥る可能性あり、留意が必要

情報管理の徹底は必須、連絡の方法にもルールを設けて

本件M&A(譲渡)の検討および実施に際しては、情報管理の徹底が重要です。

 

社長(売り手)との初回面談時には、本件M&A(譲渡)を把握しているメンバーを、できる限り少人数に限定します。以後の社長(売り手)への連絡も、携帯と社長個人メール宛てとすることや、郵便物も宛先は社長個人親展、送信元は特定されないようするなど、一定のルールを設けることが重要です。また、従業員、取引先、取引銀行への伝達は、M&Aアドバイザーと相談のうえ、その時期・タイミングを十分に検討することが重要です。

 

[失敗例]

・本件M&A(譲渡)を知っているメンバー(幹部社員)を特定しなかったため、あるいはメンバーに秘密保持の厳守を徹底しなかったため、メンバーの中でのちょっとした軽口が、社内に広がってしまう

 

・本件M&A(譲渡)の状況などを取引先についそれとなく話をしてしまったため、その情報が取引先の業界に知れ渡ってしまう

アドバイザーの途中変更は難しい、選定は慎重に

M&Aの成否は、経験豊富なM&Aアドバイザーの活用次第によるところが大といえます。企業オーナーにとって、M&A(譲渡)は重要な決断であり、ストレスのかかるプロセスとなりますので、M&Aアドバイザーは、M&A実績も豊富で当該業種にも通じていることもさることながら、人物的にも信頼できるアドバイザーを任命し、長丁場の伴走者として選任することが重要です。

 

M&Aアドバイザリー契約(M&A提携仲介契約など)には、契約終了後の同種契約の成立時の報酬規程(テール条項)などがあり、アドバイザリー契約後にアドバイザーを容易に変更することは難しい側面があります。アドバイザリーの選定は、十分に検討しておくことが重要です。

 

[失敗例]

・M&A(譲渡)を考え、知人から紹介を受けたM&Aアドバイザーと契約したが、実際のM&Aの経験が浅く、ネットワークもなく、有力な候補先が現れないまま期間が経過。有効なアドバイスももらえず、契約を終了したい場合でも合意解約の規定があり、一方の意向だけでM&Aアドバイザー契約の終了ができないことあり

 

・また、アドバイザリー契約終了後の同種契約の成立時の報酬規程等(テール条項)により、新たなアドバイザー選定の障害になる可能性があり、同様にアドバイザーの選定およびアドバイザリー契約内容には留意が必要

 

 

五十嵐 次郎

ファイブ・アンド・ミライアソシエイツ株式会社

 

 

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スモールM&A実務ハンドブック

スモールM&A実務ハンドブック

五十嵐 次郎

中央経済社

事業承継やM&Aを必要とする中小企業や小規模事業経営者、それを後押しする税理をはじめとする士業、独立系コンサルタント、地域金融機関の方々に向けたスモールM&Aの入門実務書。

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