「命を育む大変さを、男性にも知ってほしい」と語る山下真理子氏

いつまで続くのか分からず、「出口の見えないトンネルのなかにいるよう」とも言われる不妊治療。女医の山下真理子氏も、そんな不妊治療で子供を授かったひとりだという。どのような問題に直面し、どう向き合ってきたのか、医師の立場から語ってもらう本連載。第7回目は、不妊治療の末に子ども授かり、妊婦として過ごす中での身体の変化について解説してもらった。

夫に八つ当たりした日々

栄養学を少し勉強していた私は、吐き気に襲われながらも、栄養管理だけは必ずしようと決めて、頑張ってサプリメントなどは必ず摂るようにしていた。

 

食べ過ぎても食べなさ過ぎても、ビタミンをはじめとした、妊娠中に必要な栄養素が不足して、余計につわりが悪化したり、胎児の発育に関わる場合もある。

 

ちなみに、つわりの原因はわかっていない。

 

15週を超えたあたりには、つわりは徐々におさまっていった。

 

お腹の膨らみが気になり始める頃には、つわりはほぼ改善していたが、今度は子宮の拡大による胃の圧迫で、食事量が大幅に減ってしまった。

 

体重管理を、と言われてスタートした妊婦生活だが、私は、臨月になるまで、ほとんど体重が増えなかった。逆に、やつれて激痩せして、周囲から心配されたほどだった。

 

治療法のないつわり、そして思い通りにならない体に、イライラして、夫に何度も八つ当たりした。

 

もしこの連載を読んでいる男性の方がいたら、妊娠って、ものすごく大変なことなのだということを是非知ってほしいなと思う。

 

女性が命を育むことは、本当に大変なこと。不妊治療もそれはそれは大変だし、妊娠することも大変なこと。妊娠しながら、仕事をしたり、家事をしたり食事を作ったりすることは、みんな当たり前にしていることではあるけれど、決して楽なことではない。

もう妊娠生活はいい

毎日、少しでも体に変化があるたびに、「お腹の子は大丈夫かな」と不安になった。

 

1日も早く、妊娠生活を終えて我が子に会いたい、と思った。お腹はどんどん大きくなっていって、お気に入りだった服はどんどん着られなくなる。次第に、動いたりしゃがんだり、起き上がったりすることも大変になる。仰向けに寝ると苦しいので、いつも横向きで寝なければならなかった。

 

胎動が激しくて、肋骨の辺りを蹴り上げられたら、痛くて動きを止めるほど。

 

もう妊娠生活はいい、とにかく早く会いたい。

 

いつ出産が起こってもおかしくない、37週以降に入ってからは、毎朝そう思っていた。

 

今思うと、お腹の中で我が子を育みながら、子供が生まれたあとの生活を、夫と二人であれこれ話すのも、貴重な時間だったし、つわりや、大変なこともあったけれど、かけがえのない時間だったな、と思う。

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