「排泄処理は無理」でヘルパーに丸投げも
でも、父のほうも恥ずかしさや屈辱感で極度のつらさを味わっているに違いない。そんな気持ちを考えると、嫌そうな顔は絶対できません。あえて「なんてことはない」という表情をつくり、淡々と処置することに努めました。
そのときはいろいろなことを考えました。父が病院で手術を受けたあと、看護師さんに排泄の処置をしてもらっている状況に遭遇した経験があったため、そのときの態度を真似ようか…などと。とにかく父を傷つけないようにと必死で、終わったあとはドッと疲れが出ました。
ただ不思議なもので、3回ぐらい処置を経験したあとは「もっと手際よく処置するにはどうしたらいいだろう」と別のほうに意識がいき、それにつれて抵抗感は薄れていきました。
もっとも、親しいケアマネに聞くと、この反応は標準的ではないとのこと。「排泄の処置なんか絶対に無理」といってヘルパーにすべてを任せる人も少なくないし、いつまでたっても慣れないと嘆きながらしている人もいるそうです。
介護が始まった当初は、このほかにもやらなければならないことが次つぎと発生し、介護者はそれに追われることになります。たとえば、これまでの生活ではまったく縁がなかった物を買いに走ること。紙パンツやオムツ、おしりふき、消毒用ティッシュ、食欲がないときに必要な栄養素が摂れるドリンク、誤嚥を防ぐ「とろみ剤」などです。
また、介護される人が寝たきりの場合は、介護者を呼ぶ機器も必要になります。わが家では最初、携帯電話を利用していましたが、認知症が出てからは操作ができなくなり、ワイヤレスのチャイムを購入し、使うようになりました。このようにそのつど、必要なものが出てくるのです。
相沢 光一
フリーライター