(※画像はイメージです/PIXTA)

近年の研究では、脳の寿命も身体と同じように健康な働きを維持したまま延ばしたり、知的活動で活性化できることが明らかになっています。本記事では、高齢者の「意欲の状態」から推察できる健康不安について、アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学の専門医が解説します。※本記事は、新井平伊著『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文春新書)から抜粋・再編集したものです。

脳の健康には「前向き」なほうが望ましい

●「情」で大切なのは「楽しい」という感情

 

意欲を高めることの次に大事なのは、情です。感情にもさまざまありますが、脳の健康のためには、悲しみや辛さを感じるより、前向きなほうが望ましいのです。

 

健康な人でも年齢を重ねるにつれ、意欲は自然と落ち、社会的な活動も減ってしまいます。それは正常な老化ですから、どうやって意欲を湧きたたせていくかが大切。

 

意欲を支えるキーワードは、「楽しい」という感情です。「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、楽しむことは大切です。ゴルフやカラオケが好まれるのは、仲間に勝つのが快感だったり得点で上達を感じられたりするなど、楽しさがあるからです。楽しくなければ意欲は薄れ、何に取り組んでも長続きしないものです。

 

楽しむことには、意欲も高める相乗効果があるのです。鍛えた筋肉が衰えないのと同じように、神経細胞も活性化し、ネットワークの働きも維持できます

 

意欲がなければ、喜怒哀楽の感情も湧きません。もっとも、喜と楽がよくて怒と哀はダメと割り切れるわけではなく、怒の感情をプラスのエネルギーに換えて頑張れることもあります。何事もバランスが肝心です。

 

しかし、感情の起伏が激しすぎる人は、神経細胞を維持しやすい代わり、ストレスを溜めたり寝不足になりやすいというマイナス面があるかもしれません。

 

怒ると頭に血がのぼると言われる通り、イライラすると、戦いの神経である交感神経が速やかに働き、血圧を上昇させます。血圧が下がった状態では戦えないので、目がカーッと開かれ、のどが渇きます。しかし血圧が上がり過ぎると、脳の血管が切れてしまう場合もあります。極端なケースが腹上死というわけです。

 

●「知」を鍛えるゲームは?

 

「意・情・知」の一番上に位置するのが知能です。認知症というのは、脳の老化のうち知の部分の破綻です。

 

知能そのものの衰えを予防する方法としては、計算ドリルや漢字パズルなどの脳トレが有名ですが、学術的にはあまり効果はないとされています

 

数字が変わるだけで、やることは同じ計算やパズルだからです。集中力はつくかもしれませんが、脳の一定の部分しか使いません。同じ作業を繰り返していると、使われない部分の脳はさぼってしまうのです。

 

巷にあふれている脳トレは、脳機能の一部分を捉えた鍛え方にすぎないと思います。もちろん、意欲をもって楽しんでいればいいのですが、義務のようになって苦痛に感じながらやるのでは、意味がないと思います。私のお勧めは囲碁や将棋、トランプやマージャンなどの対人ゲームです。  

 

 

新井 平伊

順天堂大学医学部名誉 教授

アルツクリニック東京 院長

 

 

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脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法

脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法

新井 平伊

文春新書

近年、身体の寿命ははどんどんのびているのに、脳の寿命はのびていません。このアンバランスをどうにかしたい、ということで本書は書かれました。 本書では、まず、その脳の謎から説き起こし、なぜ、脳が老化するかについて…

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