(※画像はイメージです/PIXTA)

脳の細胞は、一度死滅すると再生しない――。近年では、そんな定説を覆す研究結果が発表されています。脳の寿命も身体と同様、健康な働きを維持したまま延ばしたり、知的活動で活性化することが可能なのです。脳が老化する仕組みとそれを予防する方法を、アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学の専門医が解説します。※本記事は、新井平伊著『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文春新書)から抜粋・再編集したものです。

 

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脳の老化に早めに気づくためのキーワードは「変化」

脳の老化に早めに気づくために、ちょっとした「変化」を見逃さない

 

●自分の「変化」に気づくことが大事

 

人間の身体は、老化から逃れられません。自覚しやすい老化現象といえば、老眼と白髪(とくに鼻毛に混じる)です。臓器だと、肝臓や腎臓の機能が悪化すれば、血液検査の数値で一目瞭然です。

 

脳の老化は、わかりにくいのが特徴です。働きぶりが数値で示せないこと。加えて、前章で述べたように、衰えを自動的に補完する機能がある程度まで自然にカバーしてしまうからです。そのため、異常が顕在化するのに時間がかかります。

 

脳の老化に早めに気づくためのキーワードは、「変化」です。それまでの暮らしぶりや仕事ぶりに比べて、違う「何か」を見逃さないことです

 

たとえば、なぜかイライラする、眠れなくなる、外出がおっくうになる、趣味に楽しみを感じなくなる、ど忘れが増える、同じことを何度も聞くようになる、などのちょっとした違和感。あるいは、頭痛や胃痛の場合もあります。

 

 脳の老化・変化のポイント 

 

なぜかイライラする
眠れなくなる
外出がおっくうになる
趣味に楽しみを感じなくなる
ど忘れが増える
同じことを何度も聞くようになる
頭痛・胃痛

 

 認知症に至る2つの段階 

 

主観的認知機能低下(SCD)
検査で認知機能の低下は見られないが、上記のような変化の自覚がある状態

 ⇓

軽度認知障害(MCI)
物忘れが主な症状。日常生活に大きな支障はなく、認知症とまでは診断されない状態

 ⇓

MCIの10~15%がアルツハイマー病へ移行

 

どういう変化が現れるのか、一概には言えません。個人の人生や置かれた環境によって異なるので、ほかの人には当てはまらないからです。変化を判断するには、学校や会社や家庭で担ってきた役割を、変わらずに果たせているかどうか確かめること。これまでの生活と比較するのが、一番いい方法です

 

そうした変化に真っ先に気づくのは、たいてい自分自身です。ところが気づいたとしても、その分よけいに頑張ってしまったり、いずれ元に戻るだろうと軽く考えがち。都合の悪いことは否認しようとするのが、人間の正常心理なのです。

 

やがて家族や職場の同僚など、周囲の人が気づきます。その間、変化はさらなる老化へ進んでいるわけです。  

 

脳が健康な状態から認知症へ至る間に、医学的には2つの段階があります。

 

まず「主観的認知機能低下(SCD=Subjective Cognitive Decline)」。検査をしても認知機能の低下は見られないものの、右のような変化が生じたことを自覚している状態を言います。

 

その先が、認知機能の低下が確認できる「軽度認知障害(MCI=Mild Cognitive Impairment)」。物忘れが主な症状ですが、日常生活に大きな支障はなく、認知症とまでは診断されない状態を指します。ただし、年間にMCIの人の10~15%がアルツハイマー病へ移行するとされるので、認知症の前段階と捉えることもできます。

 

日本には、認知症の人が460万人、MCIの人が400万人いるといわれます。SCDとMCIを認知症へ進ませないためにどうすればいいかは、大きな課題です。

 

 

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脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法

脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法

新井 平伊

文春新書

近年、身体の寿命ははどんどんのびているのに、脳の寿命はのびていません。このアンバランスをどうにかしたい、ということで本書は書かれました。 本書では、まず、その脳の謎から説き起こし、なぜ、脳が老化するかについて…

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