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脳の老化に早めに気づくためのキーワードは「変化」
●自分の「変化」に気づくことが大事
人間の身体は、老化から逃れられません。自覚しやすい老化現象といえば、老眼と白髪(とくに鼻毛に混じる)です。臓器だと、肝臓や腎臓の機能が悪化すれば、血液検査の数値で一目瞭然です。
脳の老化は、わかりにくいのが特徴です。働きぶりが数値で示せないこと。加えて、前章で述べたように、衰えを自動的に補完する機能がある程度まで自然にカバーしてしまうからです。そのため、異常が顕在化するのに時間がかかります。
脳の老化に早めに気づくためのキーワードは、「変化」です。それまでの暮らしぶりや仕事ぶりに比べて、違う「何か」を見逃さないことです。
たとえば、なぜかイライラする、眠れなくなる、外出がおっくうになる、趣味に楽しみを感じなくなる、ど忘れが増える、同じことを何度も聞くようになる、などのちょっとした違和感。あるいは、頭痛や胃痛の場合もあります。
脳の老化・変化のポイント
なぜかイライラする
眠れなくなる
外出がおっくうになる
趣味に楽しみを感じなくなる
ど忘れが増える
同じことを何度も聞くようになる
頭痛・胃痛
認知症に至る2つの段階
主観的認知機能低下(SCD)
検査で認知機能の低下は見られないが、上記のような変化の自覚がある状態
⇓
軽度認知障害(MCI)
物忘れが主な症状。日常生活に大きな支障はなく、認知症とまでは診断されない状態
⇓
MCIの10~15%がアルツハイマー病へ移行
どういう変化が現れるのか、一概には言えません。個人の人生や置かれた環境によって異なるので、ほかの人には当てはまらないからです。変化を判断するには、学校や会社や家庭で担ってきた役割を、変わらずに果たせているかどうか確かめること。これまでの生活と比較するのが、一番いい方法です。
そうした変化に真っ先に気づくのは、たいてい自分自身です。ところが気づいたとしても、その分よけいに頑張ってしまったり、いずれ元に戻るだろうと軽く考えがち。都合の悪いことは否認しようとするのが、人間の正常心理なのです。
やがて家族や職場の同僚など、周囲の人が気づきます。その間、変化はさらなる老化へ進んでいるわけです。
脳が健康な状態から認知症へ至る間に、医学的には2つの段階があります。
まず「主観的認知機能低下(SCD=Subjective Cognitive Decline)」。検査をしても認知機能の低下は見られないものの、右のような変化が生じたことを自覚している状態を言います。
その先が、認知機能の低下が確認できる「軽度認知障害(MCI=Mild Cognitive Impairment)」。物忘れが主な症状ですが、日常生活に大きな支障はなく、認知症とまでは診断されない状態を指します。ただし、年間にMCIの人の10~15%がアルツハイマー病へ移行するとされるので、認知症の前段階と捉えることもできます。
日本には、認知症の人が460万人、MCIの人が400万人いるといわれます。SCDとMCIを認知症へ進ませないためにどうすればいいかは、大きな課題です。
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