意欲を持たねば、感情は動かず、知能も駆使できず…
●「意・情・知」の大切さ
「知情意」という言葉があります。人間の精神活動の基本で、普通は「知性・感情・意志」を指します。ドイツの哲学者カント(注4)の唱えた「知情意」は、情と意が右と左で知が上にある、三角形の概念です。
(注4)カント:エマヌエル・カント。1724~1804年、ドイツ観念論の起点となった、近世哲学を代表する最も重要な哲学者。主著に『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』。
私は「知性・感情・意志」ではなく、「知能・感情・意欲」と捉えています。知能とは、人間が道具を使ったりコミュニケーションをとったり、社会生活を送っていく上での認知機能のことです。
●土台は意=意欲
この中で土台となるのは、意欲です。一番下に意、その上に情、一番上に知が乗っているタテ並びの「意・情・知」です。
まず意欲を持たなければ、感情は動かず、知能を駆使するような活動に至らないからです。脳の健康は、意欲がどのくらい強いかに左右されると私は考えています。
身体のコンディションと血管の健康が、そこへ影響を及ぼします。身体が不調のときは、何をするにもやる気が湧きません。身体の調子がよければ、前向きにも貪欲にもなれます。
人間の活動にとって最も重要な意欲を、脳の中で司る部分は前頭葉です。ところが血管性の障害が起こったとき、真っ先に機能が衰えるのは前頭葉なのです。するとたちまち、意欲が失われてしまう。繰り返し述べている血管の大切さに、やはり話は戻るわけです。
意欲が活発になると、脳の神経細胞は活性化します。ニワトリが先か卵が先かのような話ですが、神経細胞がたくさん働いている人は意欲が旺盛で、意欲があれば代償機構やネットワークも維持されるのです。
意欲には、自分から進んで取り組むことによって出てくる場合と、周囲から期待されることによって出てくる場合があります。
仕事そのものが生きがいだと感じる人は、自分の目標を達成することに意欲が湧くでしょう。仕事は客観的な成果を要求されますから、たとえ気が進まなくてもやらざるを得ない面があります。でもその時にも、課せられた責任を果たすとか顧客のために尽くすという点で、やりがいを感じる人もいるでしょう。
定年間近になった会社員が窓際へ追いやられたり、再雇用で給料が下がったために意欲を失くしてしまうのは、脳にとってもったいない話です。
若い社員に伝えるべき経験や、ベテランにしかできない仕事もあるはずです。好きなことや新たなやりがいをセッティングしてあげられれば、脳の神経細胞が活性化され、ネットワークも活発になります。そこでもうひと働きできれば、会社にとってもプラスになるはずです。居場所を与えられることや他人から得られる評価は、受け身の意欲だとしても脳を刺激するのです。
定年退職した途端、生気をなくしてしまう人がいます。主婦の方から「子供が小さいときは頑張っておかずをいっぱい作ったけど、独立してしまってダンナだけになったら、もう作る気がしない」というお話を聞くこともあります。
こういう方々は、意欲をもてる対象を新たに探す必要があります。たとえば、働くのはお金を稼ぐためと割り切っている人は、やりがいのある趣味を見つけなければいけません。
意欲は、生物として本能的に備えている睡眠欲や食欲、性欲と結びついています。人によって低かったり、病的に高い場合もありますが、多くの人間は理性や道徳観によってその度合いをコントロールしています。
フロイト(注5)の精神分析学では、自分を抑えるスーパーエゴ(超自我)という心の領域があって、意欲や欲望や本能と、道徳心や社会性のバランスを取っていると考えます。
(注5)フロイト:ジグムント・フロイト。1856~1939年、オーストリアの精神科医、精神分析の創始者。主著に『夢判断』『精神分析入門』。
脳科学から見ると、睡眠欲や食欲も含めた本能的な欲求は大脳辺縁系が司っていて、左右の大脳半球に挟まれている間脳が中継しています。その欲求をコントロールしているのは、人間にとって司令塔に当たる前頭葉です。本能を理性で制御しているわけですから、フロイトの説は脳科学的に見ても正しい部分があるといえます。
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