(※画像はイメージです/PIXTA)

近年の研究では、脳の寿命も身体と同じように健康な働きを維持したまま延ばしたり、知的活動で活性化できることが明らかになっています。本記事では、メンタルの老化と脳の老化の関係について、アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学の専門医が解説します。※本記事は、新井平伊著『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文春新書)から抜粋・再編集したものです。

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脳神経細胞の老化が「メンタルの老化」として出現か

脳の老化は、次の4段階に分けて仕組みを知り、それぞれに予防方法を考えます。

 

身体全体の老化

脳の血管の老化

脳の神経細胞の老化

メンタルの老化

 

 メンタルの老化──意欲を高めて役割を果たす 

 

脳の神経細胞の老化は、メンタルの老化という形でも現われます。血管の老化と神経細胞の老化によって、人間ならではの形で現れてくるのが、精神面の衰えなのです

 

例えば、抑うつ感、気弱、おっくうさといった精神状態です。

 

メンタルが老化すると、普通にこなしていたことが何となく面倒になってきます。仕事に対するやる気や趣味の楽しさを感じなくなったり、若い頃に比べると情熱が減ってきたり、身体の疲れを感じやすくなったり。「まあ、いいか」が口ぐせになって、諦めたり先延ばしにすることが増えたりします。  これらは正常な老化ですが、わかりにくいのはメンタルの健康に定義や指標がないからです。平均値から健康な範囲を定義づけたり、それを逸脱すれば機能異常だと判断することができません。

 

そこで心理学や精神医学では、メンタルの健康について「価値基準」という評価を行ないます。

 

学生だったら、毎日学校へ通い、授業をさぼらずに勉強できるかどうか。社会人なら、会社へ行って仕事をするなど、与えられた役回りをきちんとこなせるかどうか。その人にとっての価値をクリアしていればメンタル面で健康だという評価を、価値基準と呼ぶのです。

 

平均値を当てはめるのではなく、個人個人の環境や立場に応じて、社会的にやらなければならない役割を全うできているかどうかで判断するわけです。

 

血管や神経の老化を生物学的だとすると、メンタルの老化は人間独特の社会生活や行動をする上での症状です。漠然と「今日は会社に行くの嫌だな」と感じてしまう。若い頃には徹夜仕事など平気だったのに、無理が利かなくなってくる。人はそれを体力の低下と捉えがちですが、メンタルの老化なのかもしれません。

 

いつも仕事をさぼっているあの人も、実はメンタルの老化が進んでいるのかもしれません。周りから「アイツ、やる気ないな」と見えてしまうのですが、踏ん張りが利かなくなって「ここらでいいかな」と妥協するしかないのは、本人にとっても辛いことかもしれません。

 

個人によって幅はありますが、次第に価値基準を満たせなくなり、役割を完全に達成できなくなったときは病的な状態だといえます。

 

しかし、画像で見ると脳が萎縮しているのに、バリバリ働いている人もいます。それは意欲の問題です。「意・情・知」のうちの意と情は、メンタルに強く影響するのです

 

老化に伴い、社会的な役割の中で自分の果たすべき仕事の量が落ち、無理が利かなくなってくるのは自然なことです。しかし、反対に、ミスは少なくなるように脳は働くものです。

 

体力や集中力の低下を経験や判断力でカバーしたり、上手に手を抜くことで、若い人に負けないクオリティと自らのメンタルステートを保つ。そうやって価値基準を満たそうとする老練さこそ、健康な老化だと私は考えます。

 

 

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脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法

脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法

新井 平伊

文春新書

近年、身体の寿命ははどんどんのびているのに、脳の寿命はのびていません。このアンバランスをどうにかしたい、ということで本書は書かれました。 本書では、まず、その脳の謎から説き起こし、なぜ、脳が老化するかについて…

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