日本の研究テーマは「ブーム」で決まる?
スタンフォードのみならず、アメリカの大学の研究所は起業型ですが、その点、日本の大学はかなり違います。「この研究がしたい!」という科学者の申請が文部科学省(日本学術振興会)に認められて下りる科学研究助成金というものがありますが、それは日本全体の研究費である「科学技術振興費」のごく一部に過ぎません。
日本のほとんどの大学では大学ごとに研究費の割り当てがあり、すでにある研究室にトップダウンで分配されるようになっています。ヨーロッパの大学でもこういった仕組みはありますが、米国の大学では、複数のPI(Principal Investigator:ラボを主宰する主任研究員。“社内起業”した教授がPIになることが多い)で構成される大型の研究費申請でも自ら応募して、競合的な申請/審査の過程を経ます。大型機器の購入に関しても同様の申請/審査が必要です。
そして日本の場合、大学の研究所がどのようにして立ち上がり、研究が始まるかと言えば、「お隣さんや諸外国での動向を見て、とりあえずうちも」という右へならえの要素が強くあるのですから困ったものです。
「京大のiPSはすごいし、A大学にもB大学にもiPS研究所があるから、うちの大学も作ろう」「睡眠は大事だし関心も高いから、医学部に睡眠科を作って研究しよう」
失礼ながら、これではブームに乗っているだけです。科学のスタートはひらめきと仮説で、本来、研究テーマはそこから生まれます。それなのに「流行りだから、研究資金が得やすいから」というスタートでは、成果を出そうという熱意と実際に結果を出す力が湧き出るはずもありません。ブームで立ち上がる日本の研究が、独創的で起業型のアメリカの研究と比べて元気がないのは、当然の結果と言えるのではないでしょうか。
西野 精治
スタンフォード大学 医学部精神科教授・医学博士・医師
スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNL)所長
日本睡眠学会専門医、米国睡眠学会誌、「SLEEP」編集委員
日本睡眠学会誌、「Biological Rhythm and Sleep」編集委員
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