(※画像はイメージです/PIXTA)

近年の医学部は極めて狭き門となり、医師になるのは大変です。しかし、そんな苦労をしてやっと医師免許を取り、クリニックを開院しても、かつての開業医たちの1/3程度しか収入が得られないとしたら、どうでしょうか。開業医の収入が減少する要因は複数あり、残念ながら現実になる可能性は高いのです。クリニックを経営する医師でありながら、経営戦略ビジネスも展開する蓮池林太郎氏が解説します。

開業医にとって厳しい未来がやってくる

医学部生のうち、親が医者なのは国公立医学部で15%前後、私立医学部で半数前後というデータからもわかるとおり、医者の子どもは医者になりやすい傾向にあります。

 

現在、大学進学~卒業して新社会人になっている年齢の人たちは、四捨五入すると、各学年あたり120万人程度になりますが(出所:e-Stat「年次別にみた出生数・出生率(人口千対)・出生性比及び合計特殊出生率」より)、毎年医師国家試験に合格するのは、およそ1万人弱ですので、大雑把に換算すると、人口の1%弱が医者だということになります。それを考えると、「医者の親が医者である確率」は驚異的に高いといえます。


もっとも、親が医者なら医者という職業も身近ですし、親が開業するクリニックの跡継ぎとして期待されることも、医者という職業を選ぶ十分な理由になるでしょう。

 

しかし、せっかく自分の子どもが医師になり、クリニックの跡継ぎとなることを選択してくれても、いままでのように「これで安泰」とはいきません。これからの時代、人口減や医師の増加により、開業医にとって一層厳しいものとなることが予想されます。

 

そこで、現在生まれたばかりの子ども世代が医師となって活躍するであろう、20年後の2040年、そして40年後の2060年のクリニック経営をシミュレーションしようと思います。

 

あくまでも予測ですが、今回は日本国内の人口と一般診療所(無床)数から、具体的にどれくらい厳しくなるのか計算してみました。

人口減と診療所の増加で、診療所の患者は減少

2020年現在の日本国内の人口は1億2600万人ほど、一般診療所(無床)数は10万軒ほど。単純計算すると、1億2600万人÷10万軒なので、診療所1軒あたりの患者は1260人ということです。

 

1億2600万人÷10万軒=1260人/軒

 

では、2040年の診療所数は何軒くらいになりそうでしょうか?

 

1980年時点の一般診療所(無床)は約5万軒、2000年時点での一般診療所(無床)は約7万5000軒となっており、20年ほどで一般診療所(無床)は約2万5000軒増えたということになります。

 

診療所が増えた理由としては、1970年代、人口10万人に対して100人程度だった医師数を150人にするべく医学部が増設されたことや、開業医の平均寿命が長くなった結果、閉院する診療所が減ったことなどがあるほか、さらに毎年新たな診療所が開業していることから、診療所の数は増え続けています。

 

20年後の2040年、もしいままでと同じペースで診療所が増え続けたとすると、診療所の軒数は約12万5000軒。2040年の人口推計は、約1億1000万人だと予想されています。

 

そこから1診療所あたりの患者数を試算してみると、11000万人÷12万5000軒で、患者数は880人になります。

 

1億1000万人÷12万5000軒=880人/軒

 

40年後の2060年も、同じスピードで診療所が増加していったと仮定して、診療所の軒数を約15万軒、2060年の予想人口推計は約8700万人ですので、8700万人÷15万軒で580人、ということになります。

 

8700万人÷15万軒=580人/軒

 

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