(※写真はイメージです/PIXTA)

外国人による不動産投資の規制緩和から6年、その間にベトナム経済は目覚ましい発展を遂げました。しかし、外国人による不動産投資には細心の注意が不可欠です。不動産投資に関する法律にあいまいさが残るほか、社会主義国であるベトナムは、情勢によっては自国民保護の政策へとすぐさま切り替わる可能性があるからです。南部ホーチミンを拠点とし、不動産ビジネスを展開する徳嶺勝信氏が解説します。

マンション家賃収入、ホーチミン市では極めて低調に

ご存じの通り、不動産投資による収益には、家賃収入などの「インカムゲイン」と、不動産価格上昇による売買差益「キャピタルゲイン」の2種類があります。

 

現在、主要都市部での賃貸価格は非常に低迷しています。マンション賃貸による利益率は2つの都市、とくにホーチミン市で非常に低い状態が続いています。

 

ホーチミン市では、新規供給のピークだった2015年から2016年頃に売りに出されたマンションが多く、購入者も多くいました。なかでもハイエンドクラスのマンションの場合、購入者の50~60%が賃貸用です。当時は収益率も非常に高く、最大8%(平均値としては年間7~7.5%)を超えるプロジェクトもありました。

 

しかし、当時から供給過多の懸念もあり、利益率が低下すると予測されていました。その後、新規供給の法的事情による供給制限があり、供給数は急激に減少しましたが、反面、供給不足による販売価格の上昇が起こり、賃貸価格とのバランスが崩れ、賃貸利回りは7.5%~6.5%、6%~5%へと、年々低下しています。

 

つまり、新型コロナの影響がなくても、賃貸による利益率は低下していました。もちろん、感染拡大の影響も非常に大きく、不動産会社CBRE VIETNAMの直近6カ月間の市場調査では、ホーチミン市の賃貸利回りが2.5~4%程度にまで低下していることがわかりました。理由は、感染拡大によって多くの外国人が帰国し、賃貸需要が減少し、既存の賃貸者に対しても、割引や、家主が家賃を下げなければならない状況が続いていることがあげられます。

 

今後もベトナム人の個人や家族に加え、外国人が仕事のためにベトナムに戻ってくるにも時間がかかる可能性が高く、賃料がコロナ以前に戻るまでは相当な時間が必要だと予想されます。とくに外国人が賃貸を求めるエリアでは、販売価格の上昇によって、価格に見合った賃料設定で賃貸できるかを考えると、非常に厳しいといわざるを得ません。

 

筆者の見解は、香港やシンガポール等々に在住するような、高額な賃料を支払える高所得の外国人は限られているうえ、彼らは物件を賃貸するより購入したほうがはるかにお得です。よって、インカムゲインで考える場合は、都心から外れた場所にし、ベトナム人、および一般の外国人に賃貸しても合う物件を探し出して購入するか、もしくは外国人から権利物件(外国人向け)を割安で購入後、リノベーションして賃貸価格を少しでも高めるかです。

 

しかしいずれにしろ、これまでのようにインカムゲインだけでの投資は魅力的ではありません。

供給不足で販売価格は上昇中、狙いは若年層対象物件

先の賃貸事情でも触れましたが、法的事情による新規供給制限があり、2018年後半ごろから新規供給数は急激に減少しており、とくに2020年、21年のコロナ禍で、さらに新規供給は減少しています、ホーチミン市に至っては、7月・8月・9月の3カ月間、新規プロジェクトの供給はありません。反面、供給不足による販売価格の上昇が起こり、新規販売価格は毎年上昇を続けています。

 

では、ハノイとホーチミン市のマンション需要について具体的に解説していきましょう。

 

ハノイでの7月のマンション価格は、前年同期比8%と前月比横ばいで、平均で約3,300万〜3,400万VND/m2に達しており、これは2017年以降10四半期連続です。ハノイ市場では、3,500万~4,000万VND/m2の価格帯で需要が高く、また最も多く販売されており、2021年上半期の販売量ではトップです。この価格帯を下回る物件と、7,500万〜8,000万VND/m2以上の高級マンションの供給が少ないのが、ハノイの特徴です。

 

一方、ホーチミン市での7月のマンション平均販売価格は、5,200万VND/m2で前月と変わらず推移しています。第2四半期までに約6,745戸のマンションが取引され、昨年の同時期と比較して72%増加しました。市場全体の平均販売価格(付加価値税と維持費を除く)は、5,900万VND/m2(2,570米ドル/m2に相当)に達し、3,500万VN/m2以下の価格帯はほぼありません。逆に記録的な高価格の超高級プロジェクトの販売開始により、高級マンションの平均販売価格が112百万VND/m2(4,905米ドル/m2に相当)に押し上げられ、前年同四半期比5.7%、前年比8.3%増加しました。

 

ただ、大手不動産会社のSavills発表のレポートによると、2021年第2四半期のホーチミン市のマンション市場は、過去5年間で最も低い取引率と販売率を記録したと発表しています。第2四半期の総取引数はわずか1,400戸で、前四半期と比較して35%、前年同期と比較して36%減少、販売率は37%となり、昨年の同時期と比較して10%減少しました。これは新型コロナの第4波の影響によるもので、4月末以降は、厳しい社会隔離政策により、外出制限、経済活動制限によるものと推察されます。

 

ベトナムの新規供給マンション価格はこれまで毎年、10~15%程の上昇を続けてきたものの、近年は上昇幅も減速しており、二次取引(中古、権利転売)では購入価格より10%~15%減の取引も出ています。立地や開発社ブランド、施工品質、インフラ整備、などの差もあり、すべてのマンションが値上がりしているわけではない点に注意が必要です。よって、投資する物件をより検証・精査する必要があるというのが筆者の見解です。

 

個人的には、2015年~16年ごろに販売された外国人向け物件の価格帯までがキャピタル狙いであり、2018年以降の新規供給マンションでは、あまりうま味を感じません。あえてキャピタルゲインを狙うのなら、都市部周辺のミドルクラスの物件(3,000万VND/m2~4,000万VND/m2)以下で、インフラ整備または都市開発が計画されている地区の物件を推奨します。この価格帯以下であれば、最も需要があるベトナムの若い年代への売却が可能です。この年代は、今後所得も上がり、中間層に移行する可能性が最も多く見込まれます。

 

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