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アメリカの歯列治療はワイヤーが中心だったが…
インビザラインとは、透明なマウスピースで行う歯科矯正です。アメリカで開発され、1999年にアメリカで販売開始、2006年から日本でも販売が始まっています。現在では、世界100の国や地域で導入され、施術を受けた患者は1000万人にのぼっています(2021年5月現在)。
よく「インビザラインと従来のマウスピース矯正はどう違うのか」と尋ねられることがあります。双方の違いの一つはマウスピースの型取り・設計が「デジタル」かそうでないか、ということです。
ここ数年でアメリカの歯列矯正の主流は従来のワイヤー矯正からインビザラインに変わってきています。
従来のマウスピース矯正は1~2週間ごとに通院し、歯の動きを見ながらその都度、歯型を取り直し、取り替えるマウスピースを作製しなければなりませんが、実はこの歯型を取る作業は、患者さんにとっても医師にとっても負担です。
まず、どろっとしたシリコン製の印象材を、患者さんの歯に押し付けます。患者さんにはシリコンが固まるまでじっと待っていてもらわなければなりません。なかにはその不快さに気分が悪くなり、嘔吐感を催す人もいるほどです。
しかも歯型を取り外すときに変形してしまったり、シリコンがしっかりと歯に密着していなかったりした場合には、一からやり直さなければなりません。患者さん側、医師側双方の負担が非常に大きいのです。さらに、そうまでして出来上がったマウスピースをいざ装着してみると患者さんの歯に合わなかった……といったトラブルもよく起きていました。
口腔内を「デジタルスキャン」するインビザライン
一方、インビザラインでは「iTero(アイテロ)」という3Dスキャナーを使って口腔内をデジタルスキャニングします。スティック状のカメラで1秒間に約6000枚ものスピードで高速撮影されるため、より短時間かつ精密に口腔内の状況を把握することができるのです。しかも、出来上がったマウスピースはシリコンを使ったときよりもはるかに精度が高く、驚くほどフィットします。
さらに「クリンチェック」というシミュレーションソフトなら現在の歯並びはもちろん、どのように歯が移動するのかを3D動画を使ってシミュレーションできるため、治療計画が目に見えて分かります。「治療を続け、こんなふうに歯が整うなら頑張ろう」と患者さんのモチベーションアップにつながります。だからこそ、「こんなに痛い思いをしているのに本当に治るのだろうか……」と不安を抱えながらワイヤー矯正を続けるよりも、結果が出やすいのです。
また、従来のマウスピース矯正では、通院のたびに患者さんの歯の状態を確認し、何度もマウスピースを作製する必要ありましたが、インビザラインの場合は、初回のデジタルスキャニングで治療完了までのすべてのマウスピースを作ることが可能です。
なぜそんなことができるのかというと、過去にインビザラインで矯正治療を行った世界各国の患者の膨大な症例がデータとして集まっているからです。
さらにクリンチェックが優れているのは抜歯をした場合としない場合のシミュレーションの比較もできるという点です。個人的にはよほどのことがない限りは患者さんの歯を抜く選択はしたくありませんが、患者さんにとってはパターンの具体例を見せたほうが、よりよい判断をしてもらえます。もともとインプラントが入っている場合などでも、さまざまなシミュレーションが可能です。
インビザラインの症例数が増えれば増えるほどクリンチェックの精度も上がっていきます。100年前からあまり変わっていないワイヤー矯正に対し、インビザラインはものすごいスピードで日々進化し続けているのです。
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