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歯周病は「生活習慣病」の一つに数えられている
30代以上の日本人の約8割がかかっているといわれる「歯周病」は、別名・サイレントキラーともいわれ、自覚症状が出るまでに時間がかかります。ようやく痛みに気づいたころにはもう歯槽骨まで菌がむしばんでいて手遅れだった……なんてこともあり得ない話ではありません。
実はこの歯周病、単なる歯の病気ではなく「生活習慣病」の一つに数えられているのです。特に、糖尿病と歯周病は切っても切れない関係です。
歯周病を簡単に説明すると、まず歯茎から出血や膿の症状が表れます。そうした炎症による化学物質が血管を通って体内に広がります。これらには血糖値を下げるインスリンを効きにくくする嫌な働きがあるため、糖尿病を発症させたり、あるいは進行させたりするのです。ほかにも、歯周病を放置することで心筋梗塞や脳卒中にかかるリスクも高くなります。
「歯周病って高齢者がかかる病気じゃないの?」と思うかもしれませんが、実は20歳以下でも軽度の歯周病を発症している人は半数以上いるのです。もはや年齢は関係なく、歯があるすべての人に関わる問題です。
また、妊娠をすると歯周病にかかりやすくなるということも知っておいてほしいと思います。
妊婦さんは出産予定日が近づくと「プロスタグランジン」という生理活性物質が増加し、これが一定量を超えると分娩へと進みます。実は、歯周病で歯肉が炎症を起こしている場合、プロスタグランジンが分泌され、早産のリスクが高まるといわれているのです。
実際にアメリカの『Journal of Periodontology』に発表されたOffenbacherらの調査によると、出産後3日以内の母親の歯周病検査をしたところ、口腔内の60%以上に歯周病組織破壊が見られた人は低体重児出産や早産(妊娠24週以降、37週未満での出産)のリスクが7倍以上だったという報告も上がっているのです。
また、九州大学と中国北京理工大学が2020年7月に発表した共同研究結果によると、歯周病菌のなかに含まれる「ジンジバリス菌」がアルツハイマー型認知症を引き起こす可能性があることが分かりました。つまり、歯周病予防をしっかりすることは、健康を維持することと密接な関係があるのです。