(※写真はイメージです/PIXTA)

地方都市を中心に、所有者不明の土地が増えています。背景には、相続時に登記手続きをしなくても、そこに暮らし続ける限り不便が生じにくいという、特有の事情がありました。しかし、そのまま代替わりを繰り返すと、所有者不明となりかねず、また売却にも大変な不便が生じるため、法改正が行われました。相続問題の解決に定評がある、弁護士法人菰田総合法律事務所の國丸知宏弁護士が事例をもとに解説します。

相続登記が義務に…登記法改正の概要

今回の改正について、代表的なものを取り上げてみたいと思います。

 

①相続登記の義務化

 

まず、不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に、相続登記の申請をすることを義務付けました。いままで登記の移転義務がなかったところを、新たに義務としたわけです。また、正当な理由がなく期間内の申請が漏れた場合には、過料の罰則まであります。

 

これにより、いままで「必要性がないから」といって登記をしなかった方々も、義務となったうえに過料まであるならば、きちんと登記するようになる、というわけです。

 

②死亡した旨の表示

 

次に、法務局の登記官が、住基ネット等から登記名義人の死亡の有無を確認し、登記官の職権で(相続人の申請がなくても)、死亡した事実を登記上に表示できるようになりました。これにより、登記を見れば、その名義人が亡くなっているのかどうかがわかるようになります。

 

③法定相続分による登記

 

さらに、相続開始(亡くなった時点)から10年が経過した場合には、遺産分割協議がまだ行われていない場合でも、法定相続分で登記ができる制度が新設されました。これにより、遺産分割協議が行われなかったとしても、10年が経過すればひとまず下の世代への登記が可能になりました。

 

逆にいうと、10年たつと画一的に法定相続分で登記がされてしまうことになるわけですから、不動産を取得したい相続人については、積極的にほかの相続人に対して遺産分割協議を持ち掛ける動機が生じることで、不動産が放置されにくくなるというのが狙いです。

適用は3年以内…不安のある人は、確認と対応を急いで

具体的な改正内容によって例外はあるのですが、この新しいルールが適用されるのは原則として今後約2年以内、相続登記の申請義務化に関する点は約3年以内と定められています。あまり時間がありませんから、放置によってどのような問題が生じるのか、行う場合はどのような手続きが必要となるのか、しっかりと理解しておく必要があります。

 

冒頭でご紹介したAさんは、祖父の相続人だった叔母(Aさんの父の妹)と、AさんとAさんの兄の3人で話し合い、土地を売却して法定相続分に従って分配することになりました。

 

しかし実際には、Aさんのようにスムーズに協議ができることはまれであり、相続人同士の紛争に発展して相談に訪れる方のほうが多いぐらいなのです。

 

今回取り上げた法改正の内容はあくまで概要ですが、改正の中心的な内容です。土地の登記について不安がある方は、まず上記の改正内容を理解したうえ、その他の改正の内容もご自分で確認してみてください。

 

 

國丸 知宏
弁護士法人菰田総合法律事務所
弁護士

 

 

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