調剤バブル時代もはるか昔…
薬剤師は「資格をとれば安定」と言われている職業のひとつで、確かに手に職を持つ職業としての安定はあるかと思います。その一方で大きな収入を得られにくい職業でもあります。今回は厚生労働省の「薬剤師の需給調査」を基に薬剤師の年収、及び筆者の考える薬剤師の年収の上げ方を紹介していこうと思います。
一般薬剤師の平均年収は474.2万円
令和2年7月10日に公表された、厚生労働省の「第1回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」によると、平成30年度の保険薬局の管理薬剤師の年収は754.4万円、一般薬剤師の年収は474.2万円と公表されております(※)。
見出しの内容を見て「低すぎでは?」と思った方も多いかと思いますが、薬剤師のキャリアを専門にしている筆者の経験からいうと妥当な数字かと思っております。というのも、一般薬剤師の場合は新卒者も多く含まれ、彼らの年収は400万円台前半の場合も多いためです。一方で管理薬剤師の年収は高いイメージがありますが、詳細な情報は出ておりません。おそらく筆者としては以下の理由があると思います。
※参考:薬剤師に関する基礎資料
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000647924.pdf
地方の薬剤師は年収が高い
薬剤師は一般の職業と比べて「地方に行けば行くほど年収が上がる」特殊な職業です。その背景には都心の薬剤師過多と地方の薬剤師不足が影響しています。現在、調剤薬局は全国で6万店舗以上あり、従事する薬剤師の人数は18万人前後です。つまり平均3名の薬剤師が薬局に従事している計算となりますが、1人薬剤師で運営を行っている調剤薬局も、地方には多く存在します。このような場合は薬局経営者=管理薬剤師となり、年収が高くなる傾向があります。
では薬剤師で年収を上げるためにはどのようにすべきでしょうか。その方法をいくつかご紹介します。
①管理薬剤師になる。
最もリスクが少なく収入を上げる方法です。前述の通り管理薬剤師の年収は一般薬剤師よりも高いです。自身が働いている薬局の勤続年数や薬剤師としての勤務年数にもよりますが、ある程度の実力を持っていればほぼ必ず管理薬剤師になれると言っていいでしょう。
②独立開業をする
独立をしてしまうことも一つの手です。ただし独立にはリスクも伴ってきますので、そのリスクを需要できる胆力も必要です。また独立したからといって必ずしも自身の収入が多く得られるとは限りません。想定していたほど売上が上がらなかった場合、赤字になってしまうことも理解しておきましょう。
③副業を始める
薬局で勤務をしている時間以外に副業を行い、収入を増やすという手もあります。
薬剤師のスキルを活かした副業としては「薬剤師ユーチューバー」や「医療系ライティング」「薬剤師業務の業務委託」等が挙げられます。
薬剤師に限らず、世の中には副業を行っている方は星の数ほどおり、そのほとんどがまとまった収益を上げていません。そのため、その方々よりも一歩前に出るためには相応の覚悟と勉強時間が必要であると言えるでしょう。
④薬剤師職に拘らず他職種に転職する
では他職種ではどうでしょうか。例えばMRやコンサルタント、証券会社など。
上記の職種であれば年収1000万円以上も夢ではありませんが、これらの職種に共有していることとしては、個人の能力があり実績さえ上げられれば、大幅に自身の年収として返ってくる点です。
薬剤師の資格を活かす場合は「医療系の人材紹介会社」や「医療系開業支援や経営コンサルティング会社」等があります。これらの会社は薬剤師の免許が転職に有利には働くこともあるので、他の転職者に比べて内定率は上がります。
⑤起業をする
起業は最も大きなリスクを背負うかわりに、最も大きなリターンを得られる可能性がある方法です。薬剤師の資格を取ったからといって、必ずしも薬剤師の免許を使う必要はありません。業種や職種にとらわれずに起業をして成功した人は多く存在します。
起業をする際に重要な項目として、人脈形成があります。会社員時代の繋がりが起業後も活きる場合は多くありますので、常に周りの薬剤師やお世話になっている会社・薬局とは繋がりを持てる状態にしておいた方がよいでしょう。
⑥投資を行う
余裕のある方は余っている資産を投資することで利益を得られます。投資といっても「不動産投資」「株式投資」「日本国債」「投資信託」など様々な種類がありますので、それぞれしっかりと知識を持って臨む必要はあるでしょう。薬剤師の免許があれば通常のサラリーマンよりも融資を受けやすいというメリットがあります。読者の中にも一人暮らしをするにあたって賃貸を借りる際に薬剤師の免許が有利に働いた方も多いのではないでしょうか。それだけ薬剤師という職は世間的に安定していると判断されているのです。
現在は新型コロナの影響もあり、薬局の売上も減少しています。コロナ全盛期と比べて売上は戻ってきてはいますが、医薬分業が本格化した調剤バブル時代に比べると、薬価差益や技術料の減少を取り戻すことは難しく、その分薬剤師の年収も頭打ちになると思われます。
昨今は個人が輝く時代に突入してきました。終身雇用の崩壊が謳われ、動画配信サービスやIT化の影響も後押ししているため、会社に所属せず自身の力のみで生活をしている方もいます。つまり薬剤師であっても、個人の能力がないと生き残ってはいけない時代に突入しているのです。