赤字決算でも「一過性」のものならば交渉ができる
銀行に対する国の監督は、以前よりもはるかに厳しくなった。かつて大蔵省時代、銀行検査は3年に1回程度だったが、いまは金融庁に変わって人員が増え、頻度はアップしている。
検査内容も細かくなり、債務超過先や赤字企業への貸し出しについては、検査官から詳しい説明を求められる。事前に様々な書類を用意する必要もあり、業務がストップしたりするので、銀行から赤字企業は嫌われる。
したがって、基本的に赤字決算はまずい。すでに融資している企業であっても、赤字決算になると「正常先」から「要注意先」に格付けを下げられてしまう。
ただし、金融庁の金融検査マニュアルによれば、赤字であっても、次のような場合には正常先とみなされることになっている。
①一過性の赤字の場合
固定資産の売却損、滞留在庫の処理、役員退職金、リストラクチャリングコストなどの一時的な要因で赤字となっただけで、翌期以降は黒字化できる見込みの場合だ。
例えば、上場準備のため監査法人を入れると、企業会計基準に切り替える。すると、資産価額は簿価から時価に切り替わったり、将来の退職金の引当金を積んだりすることで、経理上赤字が発生することがあるが、実態としては問題ない。
②創業赤字の場合
設立からまだ5年以内であり、当初から合理的な事業計画で赤字が計画されており、おおむね5年以内に黒字化すると見込まれる場合だ。
③赤字であっても債務弁済能力に問題がない場合
帳簿上の利益が出ていないとしても、融資を返せるというしっかりした根拠があれば正常先とみなされる。
具体的には、例えば「会社に十分な余剰資金や売却可能資産があり、債務返済能力に問題がない」「経営者に十分な資産があり、債務弁済が可能」といった事実が証明できればよい。いずれかの状況に相当することを金融機関に納得してもらえば、赤字企業でも「正常先」と分類される。
ただ、一過性の赤字であるのか、恒常的な赤字であるのかは、実際にはあいまいだ。企業の決算が赤字であれば銀行は通常、恒常的な赤字原因があるのではないかと疑う。放っておけば「要注意先」とされてしまう。
また、口頭でいくら説明しても、銀行には通じない。「来年は黒字になる」「債務弁済能力に問題がない」といったメッセージは、担当者を介しての伝言だけでは審査部門まで届かない。
良い「事業計画書」を作成して赤字の一過性をアピール
こういった場合にこそ、「事業計画書」を作って積極的に赤字が一過性であることをアピールする必要がある。「事業計画書」に説得力があれば、一過性の赤字であることを納得してもらえるかもしれない。
良い「事業計画書」を作るコツは、商品別、顧客別、地域別にビジネスを分析して、自社の強みを端的に表すことだ。
企業にはそれぞれ、売れている商品、利益が出ている顧客、利益の出ている部門など何かしら強みがあるだろう。その強い部分が健全に利益を生み出しており、次の年度は会社を黒字にすることを説明できればよい。
説得力がやや弱いときは、資産の売却や人員の削減などのリストラ計画を盛り込み、それによってキャッシュフローが十分に回ることをアピールする。