(画像はイメージです/PIXTA)

高齢者のなかには家に強いこだわりをもち、「結婚は家を守るためのもの」「養子を取っても家を存続させる」といった価値観の人もいます。「家」を中心とした考え方は、戦後あたりまでは一般的でしたが、現在の相続法とは相当な乖離があることを理解する必要があります。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

「姓の変更」と「相続権の所在」を誤解している人も…

結婚時には女性側が姓を変えるケースが圧倒的に多いのですが、相続の相談を受けていると、姓が変わることと相続権の所在について、誤解している人が少なくありません。

 

令和となった現在もなお、結婚や相続を「家の問題」として考えている方は珍しくなく、そのため、結婚して姓が変わった女性について、「お嫁に行って姓が変わったのだから、相続権はない」「姓が変わって他家の人間になったのだから、遺産を渡す必要はない」等と考えている人が意外と多いのです。

 

民法は「被相続人の子は相続人となる」と定めています。女性が結婚して姓が変わっても、両親と親子であることには変わりません。そこで、女性が結婚して姓が変わっても、被相続人である両親の相続人となります。

 

したがって、お嫁に行ったY子さんに相続権はないとする選択肢①は誤りです。

 

次に、他人と養子縁組をしてしまった子は、どうでしょうか。養子縁組をすると、「縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する」とされています。要するに、養親の子どもとなるということです。では、実親との関係はどうなるでしょうか。養親の子どもとなるのだから、実親との親子関係は無くなると考えている人も多いかもしれません。しかし、法律上は、養子縁組をしても、元の実親との親子関係は変わりません。

 

したがって、養子縁組をして養親の子どもとなっても、実親の子どものままであり、養子縁組をしても、実親の子どもとして実親の相続人となります。

 

上記のことからわかるとおり、養子になると、養親からも遺産相続を受けることができますし、実親からも遺産相続を受けることができ、二重に相続を受けるという得な立場となります。実親が2人、養親が2人と考えると、4人から遺産相続を受けることができますので、四重に相続を受けることができるということとなります。

 

したがって、養子になると実親から相続できないとする選択肢②は誤りで、選択肢③が正解となります。

「特別養子」の場合は、事情が異なるため注意

ただし、養子については注意すべき点があります。

 

養子のなかでも、養子が6歳未満、両親が25歳以上という「特別養子」の場合は、実親との親子関係がなくなります。そのため、特別養子の養子は実親の相続人とはなれず、遺産相続を受けることができなくなります。

 

その理由は、特別養子がいわゆる「養子」ではなく、実の親子と同様に取り扱いをするための特別な養子だからです。

 

また、男性が結婚したときに女性の姓を名乗る場合を「養子に行く」などといいます。しかし、「男性が女性の姓を名乗る=養子になる」ではありません。女性側の姓を名乗ったとしても、それだけでは女性の両親から遺産相続を受けることができません。

 

女性の両親と養子縁組をすることで、はじめて女性の両親の養子となります。そして、養子となれば、女性の両親が亡くなったときに女性の両親の相続人として、遺産相続を受け取ることができます。

 

結婚相手の女性の両親から「うちの財産を任せたいから、養子に来てほしい」といわれたとしても、単に女性の姓を名乗るだけでは相続権は発生しませんので、この点も注意が必要です。

 

 

高島 秀行

高島総合法律事務所

代表弁護士

 

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