(画像はイメージです/PIXTA)

日本の中小企業は、極めて高度な技術力や開発力を有するところが多く、日本経済の根幹を支える重要な存在です。しかし、そんな企業も事業承継に失敗すれば、簡単に解体・消失してしまいます。経営の盤石化と相続税・贈与税の問題を共に乗り越えて事業承継を実現するには、どんな方法があるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

経営基盤を盤石にしたいが、承継コストがかかる…

Aさんは、会社を経営しています。工場等もあり、株価は総額で5億円になると税理士からは言われています。Aさんには、Xさんという長男がいて事業を継ぐために役員をしています。

 

Aさんは、会社の株式をすべてXさんに与え、Xさんの経営基盤を盤石にしたいと思っています。Aさんは、会社の株式以外の財産は自宅(5000万円)しかなく、Xさんに会社の株式を全部渡すとすると、長女のY子さんがXさんに遺留分を請求することとなり、その遺留分は1億3750万円にもなるので、自宅をY子さんに渡してもとても足りず、Xさんが困るのではないかと心配しています。また、Xさんが相続税や贈与税を支払えないことも心配しています。

 

Aさんはどうしたらいいでしょうか。

 

①Y子さんも含めて株式を遺留分から除外する合意をすることによって、遺留分の請求を防ぐことができる。

 

②都道府県知事の認定を受けることにより、贈与税や相続税の猶予を受けることができる。

遺留分と相続税・贈与税の問題は、事業承継最大の難関

日本企業の大部分は中小企業ですが、その経営者たちの高齢化による次の世代への事業承継が課題となっています。なかでも経営者や後継者を悩ませているのが、本件でも取り上げた遺留分の問題と相続税・贈与税の問題です。

 

これらについては、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)が制定され、中小企業の事業承継が円滑にできるよう、国も対策を取っています。

 

まず、遺留分の問題です。

 

本件のように、事業承継しようとしても、株価が高い場合、遺留分も相当が金額となってしまいます。中小企業の場合、会社経営に資金をつぎ込んでしまい経営者個人に資金が無いことも珍しくありません。そうなると、遺留分を請求されると支払えないことから、経営を承継する後継者に安定した数の株式を渡すことができなくなってしまいます。

 

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