患者さんから学んだ「在宅医に求められている対応」
一般的に「闘病」という言葉には、手術や抗がん剤治療などの治療でがんの根治に向けて真っ向から立ち向かうというイメージですが、Cさんの場合は、自らの活動、すなわち地域のための環境活動を最大限続けるため、がんの存在や進行は許容しながら、うまく折り合いをつけて闘病生活を続けている状態でした。
がんの末期状態の患者さんは、残された時間に限りがあります。特にCさんの場合は、限りある時間を有効に活用していただくことが大事だと思っていました。そのため訪問診療および訪問看護の定期訪問の回数は最小限としました。
そして、疼痛コントロールのための医療用麻薬の投与量調節や、合併症である糖尿病治療のためのインスリン投与量の調節については、基本的にCさん自身にお任せすることにしました。
もちろん、困ったときには訪問看護師を通じて何でもすぐにご相談いただき、薬を追加したり増量したりすることで症状の緩和を図りました。診察のための定期訪問時には、本当はもっと詳しく活動内容についての話を聞きたかったのですが、必要最小限の時間にとどめ、普段の様子は主にメディアやSNSを通じて確認しました。
毎日たくさんの方が面会に訪れ、時に講演活動を行い、自宅でラジオの生放送に出演するなど、精力的に活動されているCさんの姿は、いきいきとしていて常に笑いに溢れており、まさに理想的な在宅療養の姿だと感じていました。
私たち在宅医は、必要に応じて診察の回数を増やし、診察時はできるだけ長く丁寧に問診や診察を行うことで、最大限の質の高い診療が実現できると考えがちですが、必ずしもそうではなく、最低限の診療回数と最小限の診療時間で有意義な診療を行い、患者さんが自由に過ごせる時間を最大限つくることも私たちの大事な役割であると、あらためて学ばせていただきました。
宮本 謙一
在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき 院長
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】