※画像はイメージです/PIXTA

病気という苦痛の種を抱えた「在宅療養」生活、いつも笑顔でいることは簡単なことではありません。しかし、明るく前向きな行動は、病状に変化をもたらすことがあります。在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長の宮本謙一氏が実際に診た、80代女性・50代男性の2つの事例について解説していきます。

患者さんから学んだ「在宅医に求められている対応」

一般的に「闘病」という言葉には、手術や抗がん剤治療などの治療でがんの根治に向けて真っ向から立ち向かうというイメージですが、Cさんの場合は、自らの活動、すなわち地域のための環境活動を最大限続けるため、がんの存在や進行は許容しながら、うまく折り合いをつけて闘病生活を続けている状態でした。

 

がんの末期状態の患者さんは、残された時間に限りがあります。特にCさんの場合は、限りある時間を有効に活用していただくことが大事だと思っていました。そのため訪問診療および訪問看護の定期訪問の回数は最小限としました。

 

そして、疼痛コントロールのための医療用麻薬の投与量調節や、合併症である糖尿病治療のためのインスリン投与量の調節については、基本的にCさん自身にお任せすることにしました。

 

もちろん、困ったときには訪問看護師を通じて何でもすぐにご相談いただき、薬を追加したり増量したりすることで症状の緩和を図りました。診察のための定期訪問時には、本当はもっと詳しく活動内容についての話を聞きたかったのですが、必要最小限の時間にとどめ、普段の様子は主にメディアやSNSを通じて確認しました。

 

毎日たくさんの方が面会に訪れ、時に講演活動を行い、自宅でラジオの生放送に出演するなど、精力的に活動されているCさんの姿は、いきいきとしていて常に笑いに溢れており、まさに理想的な在宅療養の姿だと感じていました。

 

私たち在宅医は、必要に応じて診察の回数を増やし、診察時はできるだけ長く丁寧に問診や診察を行うことで、最大限の質の高い診療が実現できると考えがちですが、必ずしもそうではなく、最低限の診療回数と最小限の診療時間で有意義な診療を行い、患者さんが自由に過ごせる時間を最大限つくることも私たちの大事な役割であると、あらためて学ばせていただきました。

 

 

宮本 謙一 

在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき 院長

 

 

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※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅医療と「笑い」

在宅医療と「笑い」

宮本 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

在宅医療は、通院が難しい高齢の慢性疾患の患者さんや、がんの終末期の患者さんなどが、自宅で定期的に丁寧な診察を受けられる便利な制度です。 メリットは大きいのですが、うまくいかないときもあります。 医師や看護師…

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