※画像はイメージです/PIXTA

病気という苦痛の種を抱えた「在宅療養」生活、いつも笑顔でいることは簡単なことではありません。しかし、明るく前向きな行動は、病状に変化をもたらすことがあります。在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長の宮本謙一氏が実際に診た、80代女性・50代男性の2つの事例について解説していきます。

結局、クルージングは…

冬はCOPDの患者さんにとって危険な季節です。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンを接種し、症状が悪化した際には速やかに抗菌剤やステロイドなどの薬を追加することで、無事に冬を乗り切ることができました。

 

後で振り返ると、クルージングに行くという目標ができて、明るく前向きにたくさん笑って過ごしたことで、その冬を越すことができたのだと思います。クルージング中は、主に船内で過ごしていましたが、おいしい食事のおかげで食欲が増し、普段の何倍も食べることができたそうです。体調が良いときにはタクシーで寄港先の観光を楽しむことができました。

消化器系のがんが進行している患者Cさん(50代男性)

がんの患者さんで、全身にがんが拡がってしまい、抗がん剤治療などの積極的な治療の効果が期待できなくなり、いわゆる「末期状態」であると医師に宣告されてからも、精力的に仕事や趣味を続けている方は決して少なくありません。皆さんとてもいきいきとした表情で、笑顔もすばらしく、がんの末期状態といわれていることが到底信じられない方ばかりです。

 

Cさん(50代の男性)は環境に関するお仕事で、執筆や講演活動、テレビやラジオなどのメディア出演を続けていました。

 

この方は、本来であればもう少し入院生活を継続し、抗がん剤投与を続けるという選択肢もありました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、入院中は友人と自由に面会したり、外出して講演活動やメディアへの出演を続けたりすることは困難でした。そのため、早期に退院して在宅療養を続けることを希望し、退院後すぐに訪問診療が開始となりました。

 

Cさんは、消化器系のがんが進行して腸の一部が細くなっており、口から十分な食事を取ることができませんでした。そのため、腸ろうと呼ばれる管が小腸の途中に入っており、そこから入れる栄養剤が主な栄養源でした。

 

腸ろうは胃ろうと違って細く、栄養を入れるにはとても時間がかかります。栄養剤の種類など、いろいろ工夫してみましたが、時間短縮は困難でした。栄養剤を注入している間は、自由に動き回ることができません。

 

Cさんは、少しでも栄養剤のルート(管)につながっている時間を短くするため、口からある程度食事を取れるようにさまざまに工夫し、嘔吐しない程度に頑張って食べていました。

次ページ患者さんから学んだ「在宅医に求められている対応」

※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅医療と「笑い」

在宅医療と「笑い」

宮本 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

在宅医療は、通院が難しい高齢の慢性疾患の患者さんや、がんの終末期の患者さんなどが、自宅で定期的に丁寧な診察を受けられる便利な制度です。 メリットは大きいのですが、うまくいかないときもあります。 医師や看護師…

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