ECB、債券購入縮小するが、テーパリングではない (※写真はイメージです/PIXTA)

ECBのラガルド総裁はPEPPの購入ペース縮小は、景気回復に伴い債券の購入ペースを縮小させるがテーパリングとは違うと説明しました。またユーロ圏国債市場では理事会の決定等を受け国債利回りが低下しており、ECBの一部タカ派(金融引締めを選好)による正常化開始の主張は否定された格好です。ただ、今回の理事会の決定にはモヤモヤ感も残りました。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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ECB政策理事会:PEPPによる債券購入を減額するも、テーパリングではない

欧州中央銀行(ECB)は2021年9月9日に政策理事会を開催し、政策金利などの政策を据置く一方で、新型コロナウイルス危機対応として設定した総額1兆8500億ユーロ(約240兆円)の緊急買い取り制度(PEPP)について、債券購入ペースの縮小を決めました(図表1参照)。

 

月次、期間:20年3月~2021年8月 出所:ECBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ECBの月間PEPP購入額の推移 月次、期間:20年3月~2021年8月
出所:ECBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ECBのラガルド総裁は政策発表後の記者会見で今回決定した債券購入ペースの縮小について、テーパリング(量的金融緩和の縮小)ではないと明言し、PEPPを向こう3ヵ月について微調整するという決定と説明しました。

どこに注目すべきか:テーパリング、PEPP、経済予想、APP

ECBのラガルド総裁はPEPPの購入ペース縮小は、景気回復に伴い債券の購入ペースを縮小させるがテーパリングとは違うと説明しました。またユーロ圏国債市場では理事会の決定等を受け国債利回りが低下(価格は上昇)しており、ECBの一部タカ派(金融引締めを選好)による正常化開始の主張は否定された格好です。ただ、今回の理事会の決定にはモヤモヤ感も残りました。

 

素朴な疑問として、債券購入額を縮小するのに、何故テーパリングではないのかということがあると思います。この点はPEPPの枠組みは、大枠(1兆8500億ユーロ)の中で柔軟に購入額を調整する仕組みで、米国などの債券購入政策のように毎月一定額を購入するものではありません。図表1にあるように、過去においても購入額の縮小はありましたが、テーパリングというわけでなく、ECBは3ヵ月おきに買い取りペースを見直す運営を行ってきました。

 

また、大枠が定められているPEPPは、来年の期限までに使いきると仮定して、大枠の残高を残りの期間で割れば最近の購入額平均である月間800億ユーロ(8月は季節要因で約650億ユーロ)は維持できず、600~700億ユーロ程度に減らす必要があります。

 

なお、PEPPの大枠の拡大や22年3月までとされる期間が延長される公算は低いと見られます。ユーロ圏の成長率予想を見ても21年は上方修正されています(図表2参照)。

 

 四半期、予想時点:2021年6月(前回)~2021年9月(今回) 出所:ECBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ECBによる経済指標の予想(21年~23年)四半期、予想時点:2021年6月(前回)~2021年9月(今回)
出所:ECBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

またラガルド総裁もユーロ圏のワクチン接種拡大などに自信を示し、資金調達環境も改善と述べています。パンデミックに由来するPEPPは存続を含め議論が求められます。

 

一方で、インフレ率見通しを見ると23年でも目標の2%水準を下回ることが見込まれています。なお、ラガルド総裁は足元のインフレ率上昇についてはエネルギー価格上昇や税制を反映した一時的要因と説明しています。弊社でもユーロ圏のインフレのピークは今年年末頃を見込んでいます。したがって、金融緩和の長期化が想定されます。

 

そこで今後注目なのが従来から債券を月額200億ユーロ購入していた資産購入プログラム(APP)です。ECBの債券購入政策がわかりにくいのはAPPとPEPPの2段構えになっていることです。

 

仮にPEPPが現在の期限である来年3月で役割を終え、終了時点の月間購入額が600億ユーロであったとします。APPは月間200億ユーロ程度の購入であるため市場への影響や、インフレ目標達成に向けた金融緩和政策の維持を念頭に、APPを増額する、もしくは当面の購入枠をAPPに設ける(PEPPの名前を変えただけ)などの対応が考えられます。

 

しかしながら、APPには様々な投資制約もあり多大な準備が求められます。ラガルド総裁はPEPPの今後は12月の理事会が重大な決定の場になると述べたのみでした。普段の会見であれば、懇切丁寧に説明をするラガルド総裁ですが、PEPPもしくはAPPの今後について、今は語る段階にまでも至っていないようです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECB、債券購入縮小するが、テーパリングではない』を参照)。

 

(2021年9月10日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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