「リフォームする」という前提で物件を探す
今回は、もっとも賢いマンション購入法をご紹介する。それは「マンション選びの後出しジャンケン」で選んだ築15~20年の優良な中古マンションのなかで、現オーナーがまだ居住中であり、なおかつ住戸内が相当傷んでいそうな物件を探すことである。
なぜ、わざわざそういう物件を探すのか。理由は大きく3つある。
①同様のリフォーム済み物件に比べて500万円以上安い
②さらに値引きが期待できる
③リフォームすれば新築同様に蘇る
まず、こうした物件は、オーナー側としては売りにくい。何よりも居住中なので、購入者側から見れば隅々がどうなっているかわからないから、不安が大きい。だからオーナー側は売り出し価格を安くせざるを得ない。
通常、その手の物件は仲介業者が安く買い取る。そして、リフォームして売り出すケースが多い。
仲介業者がそういったマンションを買い取ると、キッチン、トイレ、浴室など水回りをすべて取り換え、壁と床を張り替えるフルリフォームをおこなう。業者がフルリフォームする場合のコストは200万円が目安である。
つまり、買い取った業者は200万円かけてリフォームして再販しても、約300万円の利益が見込めるのである。だから現オーナーに対して相場よりも500万円以上安い価格で買い取りを申し出る。
これにオーナーが応じれば、その物件は流通市場に出ることなく仲介業者に引き取られる。そして数カ月後、リフォームされたそのマンションは、仲介業者が買い取ったよりも600万円ほど高い値段で売り出される。
しかし、現オーナーが仲介業者の買い取りを拒否した場合、専任媒介を依頼された仲介業者としては渋々ながらそのマンションを流通市場に出さざるを得ない。
通常、ここで「囲い込み」という違法な売却妨害がおこなわれる。流通市場に出したフリをしながら、実際には囲い込んだ状態にして買い手が現れないようにするのだ。
これは厳密には違法なのだが、大手仲介業者ですらなかば公然とおこなっている。日本の不動産流通における、もっとも改善すべき問題点だ。しかし、本連載ではそれを論じるのが目的ではないので、それは他に譲る。
囲い込みがおこなわれると、数カ月後に現オーナーが業者の買い取りへと追い込まれることになる。
しかし、稀に囲い込まれても仕方がない物件が本当に流通市場に出てくるケースもある。現オーナーが、仲介業者の囲い込みを厳しくチェックしていたり、契約上で囲い込みされることを避けたりした場合だ。そうなればスーモやホームズにも表示されて、一般の目に触れる。そういう物件をうまく見つける。
探し方は「現況」が「居住中」になっていて、価格が相場よりも安めであること。そういう物件を見つけたら、仲介業者に申し込んで内見する。
この場合、住戸内の状況に期待してはいけない。「すべてリフォームする」という前提で内見する。そして、仲介業者を通じて適度な値引き交渉をする。値段が折り合えば、購入すればいい。
目安は、想定している相場よりも最低でも500万円は安い価格。これを判断するために、自分で相場観をある程度つかんでおく必要がある。
玉石混淆だけに「リフォーム業者」選びは慎重に
相場観を身に付ける一番簡単な方法は、定点観測である。欲しいマンションを決めておくことだ。そして、そのマンションから売り出された住戸があれば、必ず内見して価格を確認しておく。2、3物件見れば、おおよその相場観はつかめる。
この手法で、うまく相場よりも500万円以上安く購入できたら、リフォーム案を考える。現況の間取りのまま水回りと壁、床をすべて取り換えてもいいが、せっかくだから自分らしく間取りを変えてみるのもいい。そのための追加費用も、たいていの場合は数十万円くらいだ。
加えて、リフォーム業者は玉石混淆なので、慎重に選ぶべきだ。賢いやり方は、建築家を見つけて依頼する方法だ。建築家といっても、著名な大先生である必要はない。一級建築士の資格を持っていて、設計事務所を経営していたり、設計事務所に所属していれば建築家といえる資格がある。現在ではインターネットでも容易に探すことができる。
建築家の報酬は、あらかじめ「数十万円」といったように決めておく場合と、「工事代金の15~20%」程度に設定するケースなど、さまざまだ。建築家を決めたら、最初に全体の予算を提示して相談するのも一つの方法だ。
リフォーム費用は70平方メートルで300万円からくらいが目安。安く上げようと考えるのなら建築家に頼らず、自分でホームセンターをいくつか回って見積もりを取るやり方もある。
この方法で築15~20年くらいの中古マンションを購入すると、相場よりも安い費用で新築同様の「自分らしい」住まいが手に入る。手間ひまはかかるが、筆者はこれがもっとも賢いマンション購入方法だと思っている。