損をしないためには「新築」であることを諦める
2015年10月、横浜のマンション傾斜問題が起こったことで、筆者のところにも一時期メディアの取材が殺到した。それこそ、毎日何社ものテレビ局や雑誌社のコメント取りやインタビューをこなした。
いろいろなことを聞かれたが、多かったのは「欠陥工事マンションを買わない方法は?」といった質問だった。
竣工したマンションを外から見る限り、欠陥工事かどうかの判別は不可能だ。ただ、慣れた人間が見れば隅々の仕上げから工事精度のレベルは想像がつく。
私は取材に答えて何度もこう言った。
「新築マンションを青田で買うというのは、100枚に1枚か2枚混ざっているババを引くようなものですよ」
雨漏りやちょっとした傾斜といったマンションの欠陥工事の実態は、2015年の横浜の傾斜マンションのようにメディアで報道されることはほとんどない。
そして、最後にいつも同じことを聞かれる。
「それでは、ババを引かない方法はありませんか?」
じつは、ババを引かなくてもいい方法があることにはある。欠陥建築のマンションを買わない、かなり確実な方法である。しかし、その方法を選ぶ場合は、あることを諦めてもらわなければならない。それは〝新築〟マンションであることだ。
前述のとおり、新築マンションを外から見ても、中身のコンクリートがどうなっているのかはもちろん、基礎杭がしっかり支持基盤に刺さっているかどうかなど、わかるわけがない。せいぜい、外壁タイルの浮きが何枚あるかを数えてみたり、壁や床の端の仕上げを見ながら「雑な工事をしているな」とつぶやくのが関の山だ。
きれいに仕上げられていても、入居後数カ月で水漏れや雨漏りが起こるかもしれない。横浜のマンションのように、何年か経ったら傾いてくるかもしれない。また、震度5程度の地震でも建物の内部に大きな損傷が生じたり、住戸内の乾式壁がずれるなどはよく起こることだ。
しかし、それらのほとんどは、施工をキッチリおこなったか否かの工事精度に左右されることであって、でき上がった建物から窺い知ることは不可能だ。とくに地震によってどうなるかは、「地震が起こってからでないとわからない」というのが現実である。
築10年までに不具合が露見しない物件は工事精度が高い
しかし、そういったことも踏まえて、「ババを引かない」マンションを選ぶとすれば、それは「築10年ちょっとの中古を狙う」ということになる。
なぜ「10年ちょっと」かというと、明解な理由がある。私の経験上、築10年までに大きな不具合が露見しなかったマンションは、工事精度が高いことが多い。その後20年、30年でもしっかりした状態が保全されるケースがほとんどだ。
逆に、工事精度が甘いマンションは、築10年以内にさまざまな不具合が生じる。そして、不具合が露見するごとに補修工事を積み重ねていかなければならない。そういった場合、そもそもの躯体の工事精度に問題があると想定できる。だから、半永久的に補修工事を続けることになる。それはもう、「欠陥マンション」と呼んでいいだろう。
そういうマンションは、絶対に買ってはいけない。いってみれば「ババ」だ。
しかし、新築マンションが「ババ」であるかどうかなんて、住む前には誰にもわからない。しいてそれを知っている人間がいるとすれば、それはそのマンションの建築現場の責任者である「現場所長」と、一部のスタッフだけ。彼らには自分たちが「手抜き工事」をしたという自覚があるはずだ。
しかし、そんなことを誰かに漏らすとは思えない。だから、誰にもわからない。