満足はしない。ただし感謝は忘れない
すべて世の中の事は、もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である。
【『渋沢栄一訓言集』国家と社会】
■完成しない「陽明門」のすごさ
「満足は衰退の第一歩」とは、渋沢さんの考え方は容赦ないですね。先ほども話しましたが、当然、この言葉どおりだと思います。
ただ、ここは渋沢さんも当然そう思っていると思いますが、今日までの感謝の気持ちがないとダメではないでしょうか。満足は当然、もうOKだというふうに思ってはいけないけれど、とりあえず現状に満足というか、感謝はしないといけない気持ちは忘れてはならないと思います。僕は渋沢さんに提言したいのですが、ここは両輪かなと思います。
ここで、日光の東照宮にあります「陽明門」の話を少々。
陽明門は柱が一本逆さまになっています。それも、あえて逆さまになっています。建立したときからそうなんです。
上向きのものをそのまま上にしてしまうと完成してしまいます。完成イコール、あとは滅びていくことになる、壊れていくことになるために、「東照宮は一生完成しない」という願いをこめて、陽明門の柱を一本、あえて最初から逆さにしているのです。
日光東照宮は江戸時代の徳川家光の時代に完成しました。そんな昔に、柱を逆さにしたままにしておくことで、完成しないことを表すという発想がすごいなと思いました。まさに渋沢さんの言葉を体現していますね。
ビビる大木