E・ZOは「世界一」を展開していくための拠点
吉本の舞台にしても、もちろん、吉本新喜劇や漫才、コントで楽しませるという狙いもあるが、太田が惹かれたのは「お笑いもあるし、彼らがやろうとしている総合的なエンターテインメントのすごさ、素晴らしさを理解していること」だという。
吉本が、新たに取り組んでいるという「ノンバーバル」の演劇がある。
つまり非言語。パントマイム、ブレイクダンス、マジックショー、ジャグリング、レーザー光線などの光学的な演出がそうだ。演劇も、言語に頼らない。表情、視線、ジェスチャーで、思いや物語を表現していく。
大阪コテコテの笑いだけではない。日本語が通じない外国人でも、その劇場にやって来て楽しむことができる。そうしたコンテンツを用意しているのだ。
例えば、これを夜9時にスタートさせる。観光から帰って来た外国人が、野球を見終えたファンが、ちょっと足を運んでみる。そのナイトショーが終わったら、ホテルのバーでゆっくりとお酒を飲む。
「海外へ行ったら、普通、こういうのがあるじゃないですか」
ただ単に、外国の真似をしているのではない。外国人の視点に立てば、日本に来て、その世界水準のアミューズメントを体験できる場所で、ゆっくりと過ごしたい。
言葉や国籍、人種の壁を超えた”世界一のおもてなし”を提供する。
野球、演劇、ショー、ゲーム、グルメ、ミュージアム。そのホスピタリティに立ち、これらの「アミューズメント」を掛け合わせていけば、その組み合わせはまさしく、幾通りも出てくるのだ。
その「世界一」という”くくり”の中に「王貞治ベースボールミュージアム」もある。
「コンセプトとして、全くずれていないんです。世界一のコンテンツといったら、怒られちゃいますね。でも、別に何もコンセプトもなく持って行ったわけじゃなく、そういうものをしっかり集める。当然、世界一に近づくようになるということなんです」
もちろん、経営的な面でもメリットはあった。
「王貞治ベースボールミュージアム」が福岡PayPayドーム内にあったときには、そこからも試合を見られるような造りになっていた。
このスペースを空けて、さらに観客を入れれば、それだけ収益は増える。
太田は、その「収益」と「歴史」とのバランスを取ることに苦心したという。「そこだけ切り取ればその通りなんです。経済合理性があるわけじゃないですか。だからやれるんです。空けたかったし、満席にしたかったんです。
じゃあ、どうしたらいい? なくすわけにはいかない。ビルができて入れば、いい形で収まるわけです。大きい柱は、僕らが持っている『目指せ世界一』のスローガン。それが理念、ビジョンみたいなものですからね。そのコンセプトとしてもずれていない。そういうことで造っているんです」
ラスベガスのように、朝から夜まで、一日中楽しめるエリアを創る。そのための”橋頭堡(きょうとうほ)“として「BOSS E・ZO FUKUOKA」があるのだ。
喜瀬 雅則
スポーツライター