(※写真はイメージです/PIXTA)

2025年は、日本にとって変化が起こる年だと言えます。その理由は、2025年が、第一次ベビーブーム(1947年~1949年)に生まれた「団塊の世代」と呼ばれる人たち全員が、後期高齢者(75歳以上)となる年だからです。このことを「2025年問題」と呼んでいます。少子高齢化社会にともない、現役世代に保険料の負担が多くのしかかる、働き手がすくなくなるなどの問題が取り上げられていますが、医療にも、そして、開業医の懐事情にも、「2025年」問題は、大きな影響を及ぼすことが予想されます。それは、具体的には、どんな事なのでしょうか。

後期高齢者の医療費窓口負担の増加が医療経営に影響

「2025年問題」が医療に影響を及ぼすのは、後期高齢者の医療費の負担増加が原因です。影響が顕著に出始めるのは、2025年10月以降になるでしょう。75歳以上の高齢者の窓口負担割合を2割とすることについては、2020年12月15日に閣議決定、2021年6月に改正法が成立しています。

 

その決定事項の中には、単身世帯で年収200万円以上、複数人世帯で年収合計320万円以上の後期高齢者は、医療費窓口負担が、現行の1割から2割に引き上げられることが盛り込まれています(社会保障審議会医療保険部会「後期高齢者の窓口負担の在り方について・令和2年11月19日)。

 

これに該当するのは後期高齢者の人口のおよそ2割にあたる、約370万人。導入は、2022年10月から2023年3月の間に行われ、施行後の3年間においては、1ヵ月あたりの負担は最大3,000円以内にとどめる、緩和措置を行うことになっています。言い換えると、2025年10月以降に後期高齢者の医療費窓口負担増加が本格的始まると考えられるのです。そして、このことは、医療経営に影響を及ぼすことが予想されるのです。

病院は高齢者を診療したほうが儲かる

「令和元年度の医療費総計(厚生労働省)」によると、令和元年度の医療費は、43.6兆円(前年度に比べて約1兆円の増加)です。そのうち、医療保険適用75歳以上の医療費(自己負担額+保険料)は、年齢が上がるごとに増えていきます。「年齢階級別1人当たりの医療費(厚生労働省)」を見てみると、

 

75~79歳は13.9万円/年 

80~84歳は14.3万円/年 

85~89歳は14.6万円/年 

90~94歳は13.2万円/年 

95~99歳は12.5万円/年 

100歳~は12.0万円/年

(調剤や食事・生活療養なども一部含まれています。)

 

となっていて、おおよそですが、10代の倍の数字です。後期高齢者になると、複数の疾患を抱えるケースが多くなることが、1人当たりの医療費が増加する理由です。
 
上記のことをクリニック経営の視点で考えた場合、高齢者を診療するほうが、収入は多くなります。

2割負担になると、高齢者は病院に来なくなる

今回の後期高齢者の医療費窓口負担が1割から2割への増加することで、受診を控える人が出てくることは、以前から問題点としてあげられていました。医療費窓口負担が1割から2割への増加することは、患者にとって従来の2倍の医療費負担になるからです。現時点で、家計に占める医療費が高い人ほど、その傾向は顕著になることでしょう。

 

このことは、病院側から考えると減収に結びつくと考えられます。高齢な患者を抱えるクリニックほど受診控えの影響が収入に影響することになります。このことに早期に対応しないと院長の報酬が減額されてしまうのです。

 

日本の医療は、大半が国の財政による保険診療により成り立っていることは、安定したビジネスモデルと思えますが、以上のことから、日本の財政問題が医療経営に直撃すると考えられます。今後に備えた収支計画を練りなおすことが、必要となってくるでしょう。

 

また、厚生労働省発表の「2018年 医師・歯科・薬剤師統計概況」によると医療施設の従事者の総数は311,963人。うち60歳から70歳の医師は53,016人(16.99%)、70歳以上の医師は30,403人(9.74%)。全世代の26.74%が60歳以上というのが日本の現状です。

 

医師の世代交代をするケースも多くあり、医師の間では事業承継のことが話題になることが多いようです。事業承継するには、子どもが医師である場合は、親から子へバトンタッチするケースが多く、そうでない場合はM&Aで第三者に承継すると思いますが、どちらのケースにしても、コストの抑制を重視した開業または分院などが今後の課題になってくるのではないでしょうか。その際に、後期高齢者の医療費窓口負担の増加が将来的に増えることを忘れてはならないでしょう。

 

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