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争族、離婚トラブル、労働問題…弁護士事務所には今日も様々な相談が舞い込みます。本連載では、弁護士法人アズバーズ代表の櫻井俊宏氏が、実際に寄せられたトラブル事例を紹介し、具体的な対策を解説します。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

養育費「裁判に勝ったからもう大丈夫」…ではない!

2 養育費について

 

養育費とは、夫婦が離婚している場合に、実際に子供に対する監護権を持って面倒を見ているどちらかが、相手に対して子供の生活費を支払ってもらう権利です(民法766条)。なお結婚している最中に、収入が多いほうの配偶者が、少ないほうの配偶者に対して支払う生活費は、子供がいたとしても「婚姻費用」と呼ばれ(民法760条)、養育費とは区別されます。

 

たとえば子供がいた場合。妻が子供を連れて夫と別居したら、夫が妻に対して支払う婚姻費用に関しては、その婚姻費用を支払ってもらう妻自身の生活費分も考慮されるので、養育費より一般的に高くなります。

 

養育費と婚姻費用は、監護している子供の人数、年齢、両者の収入等から、裁判所が用意している算定表に従って通常計算されます

 

※婚姻費用・養育費算定表
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

 

3 強制執行の方法

 

通常、裁判に勝ったからといって、そのまま裁判所が相手方から取り立てをしてくれるわけではありません。

 

裁判に勝つと判決書を得られますが、その判決書を用いて、さらに裁判所に対し、民事執行法上の強制執行の申立をします。これは判決のみならず、今回の事案にもある公証役場で作成された公正証書を用いた方法によっても可能です。

 

本件の事案においても、公正証書を用いた裁判所に対する差押え手続を検討することになります。

 

たとえば、相手方の預金口座を差し押さえることができます。この場合、その預金口座の金融機関、支店の情報が必要です。口座番号までは必要ありません。

 

この預金口座の情報に関して、判決をもって弁護士会を通した23条照会という手続を行うことができます。この23条照会を申し立てると、弁護士会から金融機関に対し、その債務者の預金口座の支店・口座番号等の情報を開示してもらうことができます。ただし、開示してくれない金融機関もあるのでその点は注意が必要です。

 

不思議なことではありますが、ゆうちょ銀行に関しては、支店の情報まで把握していなくても差し押さえることができます。

 

相手方の勤務先の給与を差し押さえることもできます。ただ、給与が44万円以下の場合は、通常その4分の1までになります(養育費の場合は2分の1。民事執行法152条)。44万円以上の部分に関しては差押えの対象になります。差し押さえられた者の生活に必要な収入をある程度は確保させるためです。

 

次ページ一番の難関…「強制執行の対象を探し出す」こと

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