要旨
変異株の感染拡大などにより、新型コロナウイルスの感染者数が増加の一途を辿っている。政府は緊急事態宣言・まん延防止等重点措置を発令し、経済活動に制限を課すことで感染拡大の抑え込みを図っているが、状況はなかなか改善せず、その結果宣言の延長・対象地域の拡大が繰り返されている。
7/12時点では、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の対象地域が6都府県だったが、8/27から緊急事態宣言が21都道府県、まん延防止等重点措置が12県へと拡大している[図表1]。
緊急事態宣言下での人出
緊急事態宣言の発令により経済活動を制限し、人流を抑制することで感染を抑えようとしているが、人流の抑制効果はどの程度あるのだろうか。東京都および大阪府の人流データをみると、1回目の緊急事態宣言が発出された20年4~5月は人出が大きく減少し、緊急事態宣言による人出の抑制効果は非常に大きかった。
しかし、2度目、3度目の緊急事態宣言が発令された21年1月~3月、4月末~6月の人流の減少は1度目を下回っている。
また、期間中に緊急事態宣言の期限が何度も延長され、宣言の終わりが見えないという状況で、人々の“自粛疲れ”が現れ始め、宣言期間中にもかかわらず人出が徐々に増加することとなった。
さらに、宣言の解除からわずか3週間で再び発令された21年7月~現在にかけては、発令前と比べてほとんど人出が減少していないことがわかる。
このことから、緊急事態宣言による人出の抑制効果は、宣言を発出するたびに弱くなっていることに加え、何度も期限の延長を繰り返すことが効果を低下させてしまっている。
一方、2021年5月に、およそ1年ぶりに2度目の緊急事態宣言が発出された岡山県および広島県の人流データをみると、2020年の宣言期間と同程度に人出が減少しており、一点集中型の政策としての緊急事態宣言は、人々に行動変容を促し、人流を抑制する効果が発揮されると考えられる[図表3][図表4]。