ECBは遠く離れて、米国を後追いか? (※写真はイメージです/PIXTA)

ユーロ圏のインフレ率は、米国ほどではないにせよ、インフレ目標を超える水準となっています。背景は昨年の価格低下の反動であるベース効果やテクニカル要因など、いずれも一時的要因と考えられます。ただ、欧州中央銀行(ECB)の一部メンバーからは物価に対し懸念の声もあり、市場では小幅ながら足元、ユーロ高やユーロ圏国債利回りの上昇が見られます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

インデックスファンドより高いリターンを狙う!
「アクティブファンド特集」を見る

ユーロ圏インフレ率:8月の消費者物価指数(速報値)は前月を上回った

8月ユーロ圏の消費者物価指数(HICP、速報値)は前年同月比3.0%増と前月の2.2%増、市場予想の2.7%増を上回りました(図表1参照)。2011年11月以来の高水準です。コアHICPも前年同月比1.6%増と、市場予想の1.5%増、7月の0.7%増を上回りました。

 

月次、期間:2018年8月~2021年8月、前年同月比と前月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ユーロ圏消費者物価指数(HICP)総合とコアの推移 月次、期間:2018年8月~2021年8月、前年同月比と前月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、前月比ベースでも+0.4%増と7月のマイナス0.1%からプラスに転じ、上昇の勢いが確認されました。

どこに注目すべきか:ユーロ圏、インフレ率、一過性、PEPP、理事会

ユーロ圏のインフレ率は、米国ほどではないにせよ、インフレ目標を超える水準となっています。背景は昨年の価格低下の反動であるベース効果やテクニカル要因など、いずれも一時的要因と考えられます。ただ、欧州中央銀行(ECB)の一部メンバーからは物価に対し懸念の声もあり、市場では小幅ながら足元、ユーロ高やユーロ圏国債利回りの上昇が見られます(図表2参照)。

 

日次、期間:2020年8月31日~2021年8月31日8月31日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ユーロ(対ドル)とドイツ(独)10年国債利回りの推移 日次、期間:2020年8月31日~2021年8月31日8月31日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

日米欧(ユーロ圏)の金融政策を比較すると、債券購入縮小に向かう米国と、当面変更が想定されない日本とユーロ圏に分類することがあります。基本的にこのわけ方は正しいとも見られますが、日本と同じ程度にユーロ圏が現状の金融政策を維持するというわけでもなさそうです。

 

まずインフレ率の水準が異なります。日本の7月の消費者物価指数(CPI)はマイナス圏となっています。先行性のある8月の東京CPIもほぼ水面下です。一方ユーロ圏のインフレ率はベース効果や、税制変更による下押し効果が失われたことなど上昇要因は「一過性」と見られます。それでもインフレ率は総合で見ると2%を超えています。対応時期は遅くとも、米国の金融政策運営に似る可能性があります。

 

なお、最近まで市場ではユーロは下落(ユーロ安)し、ユーロ圏の指標と見られるドイツ国債利回りは低下していました。背景は主な輸出先である中国の景気鈍化懸念、ユーロ圏の景況感指数の改善に頭打ちが見られたこと、新型コロナウイルスの感染拡大、ドイツの選挙動向の不透明感、そしてECBの緩和的な金融政策です。

 

これらの要因に大きな変化は見られませんが、一部に注意を払うべき変化も見られます。例えばECBの緩和姿勢ですが、8月26日に公表されたECB議事要旨(7月開催分)には、最終的にインフレ期待を目標付近に固定することに成功すれば、必ずしも「より低い金利をより長期化」させることを意味しないと述べられています。

 

7月の理事会後に、ECBは新たなガイダンス(今後の金融政策の方針)で新戦略で定めた新たなインフレ目標を持続的に達成できることが明確になるまで、超緩和的政策を続けると表明しました。このためECBは何もしないと思われがちです。確かに政策金利の変更は当面ないと思われます。しかし、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の債券購入政策については議論の余地が残されていると思われます。足元、ECB政策委員会メンバーであるオランダやオーストリアなど一部の中銀総裁は債券購入の縮小の必要性にまでコメントしています。

 

確かにユーロ圏の景況感指数は上昇が鈍化したとはいえ、相対的に高水準で推移しています。また欧州連合(EU)は8月31日に域内の成人の7割が新型コロナのワクチン接種を終えたと発表するなど以前に較べ状況は改善していると見られます。比較的中立的(または緩和的)なフランス中央銀行のビルロワドガロー総裁はPEPPについて、9月の会合で決定する緊急性はないとしても、PEPPの今後などについて議論の必要性を指摘しています。たとえ決定がないとしても、9月9日開催のECB理事会における検討内容には注目が必要とみています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECBは遠く離れて、米国を後追いか?』を参照)。

 

(2021年9月1日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

\PR/ 年間延べ2000人以上が視聴!
カメハメハ倶楽部
「資産運用」セミナー

 

【カメハメハ倶楽部のイベント・セミナー】

※<特設ページ>富裕層のためのヘッジファンド活用

 

【12/1開催】希少な"FIT型案件”を限定公開「太陽光発電」投資の最新事情

 

【12/1開催】「立ち退き、賃料増額調停」のトラブル事例と対応のコツ<弁護士が解説>

 

【12/2開催】税務メリットとキャピタルゲインが狙える!小型航空機・ヘリ投資とは?

 

【12/2開催】プロでも間違えやすいグループ再編成を活用した事業承継のルールとは?

 

【12/2開催】2022年4月、東証の「市場再編」中小型株に生まれる投資機会とは?

 

【12/7開催】市場の変動に左右されず安定した収益を獲得するための 「ヘッジファンド」戦略

 

【12/8開催】企業オーナー向けの決算対策「オペレーティングリース」投資の基礎講座

 

【12/8開催】相続、事業・資産承継の悩みを解決する「民事信託」の具体的活用術

 

【12/11開催】償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力<幻冬舎会場・限定版>

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・ヘッドライン

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!