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アフガニスタン:バイデン大統領、駐留米軍の撤収完了を発表
米国のバイデン大統領は2021年8月31日、アフガニスタン駐留米軍の撤収が完了したことを受けて国民向けに演説し、正しく、賢明かつ最善の決定だったと述べ(図表1参照)、撤収の正当性を主張しました。
アフガニスタンでの軍事駐留終了を受け、2001年9月の米同時テロを契機とした20年もの米国によるアフガニスタンへの軍事的関与は幕を下ろすこととなりました。
どこに注目すべきか:アフガニスタン、タリバン、米軍撤収、世論
アフガニスタンで米軍が撤退を進めていた中、タリバンの攻撃により、米国が支援してきたガニ政権(当時)は8月15日に首都カブールを奪われました。米軍撤収時期を見据えたタリバンの攻勢は(恐らく)米国にとっては計算違いであったと見られます。今回はアフガニスタン問題のポイントを整理します。
まず、簡単にアフガニスタンやタリバンの歴史を振り返ります。タリバンは1996年から2001年までアフガニスタンを支配していました。しかし米同時多発テロを受けタリバン政権は崩壊、その後移行政権の発足、新憲法採択、大統領選挙などによる民主的プロセスが米国支援のもとで進められてきました。
一方で崩壊したタリバンは水面下で勢力を維持しており、米国は長期にわたる駐留を余儀なくされました。転機となったのは米トランプ前政権がアフガニスタン駐留米軍の撤収と、和平に関する共同宣言を発表したことです。米国内の世論でも、アフガニスタンへの関与に対する支持が低下していたという背景があったと見ています。
米バイデン大統領は、この政策についてはトランプ政権の方針をほぼ引き継いだことになります。米国世論の半数程度は撤収を支持していると読んだのかもしれません。
しかし計算違いが起きました。タリバンの支配が予想もしない速さで起きたこと、(タリバンではないが)自爆テロにより米軍人にまで犠牲が出たことです。また同盟国との連携にも疑問が呈されたことで、バイデン大統領が自画自賛する撤収プロセスに対する世論の評価は低く、足元、バイデン大統領の不支持が支持を上回っています(図表2参照)。
次に、アフガニスタン問題の市場への影響を考えると、足元では主要な為替や株式市場などの影響は小幅と見られます。しかし、今後は次の点に注目しています。まずはバイデン大統領の支持率です。来年に中間選挙を控えての支持率低下は政策運営の点で気がかりです。なお、現在審議されているインフラ投資法案などへの影響は限定的と思われます。
難民問題も懸念されます。15年にはシリア内戦による難民への対応で欧州が混乱しました。もっとも、当時難民受け入れに積極的だったドイツのメルケル首相は国連(難民高等弁務官事務所)などが主体となるべきとの考えを示しています。また、アフガニスタンは海に面しておらず、過去のケース同様に、難民は隣国パキスタンやイランへ向かうことも想定されます。
予想が最も困難なのはアフガニスタンの今後です。このままタリバンが本当に政権運営できるのか、出来たとしたらテロ組織の温床となることは無いのかといった不安から、中国やロシアとタリバンの関係など、不透明要因は山積みです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『アフガニスタン情勢と懸念要因』を参照)。
(2021年9月2日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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