いつまで続くのか分からず、「出口の見えないトンネルのなかにいるよう」とも言われる不妊治療。女医の山下真理子氏も、そんな不妊治療で子供を授かったひとりだという。どのような問題に直面し、どう向き合ってきたのか、医師の立場から語ってもらう本連載。第4回目は「人工授精」から「体外受精」にステップアップした時の心境、キャリアや費用との間で揺れる感情を語ってもらった。

努力の全てが無駄になることも

採卵日は、事前には決まらない。数日前に決まるので、どの日になるのかは運次第。絶対に休めない仕事の日に採卵予定日が当たってしまったら、大量の薬と注射をして、なんとか卵が育ったとしても、仕事を休んで採卵をしにクリニックに行くことができなかったら、すべて無駄になってしまう。

 

職場によっては、不妊治療をしていることを考慮してくれるところもあると聞くが、非常勤を掛け持ちして複数の美容クリニックで勤務していた私の場合、とても、「実は不妊治療をしていて、そのために急に直前に休む可能性があります。」とは言い出せなかった
(基本的に美容クリニックは、1日当たり医師1人体制で、急に休むと代理のDrが見つからず、閉院するしかなくなるからだ。また、産休や育休制度はなく、出産のタイミングで辞職することはほぼ決まっていた)。

 

薬で刺激をして卵胞を発育させたとしても、タイミングを合わせて採卵の手術を行わなかったら、勝手に排卵してしまい、体外受精を実施できない。

 

これは、発育している卵胞の数は関係ない。正常な場合、排卵は、成熟した卵胞のうち一つだけが排卵する。

自然妊娠がどれだけ奇跡なのか…

10個の成熟卵胞があったとして、自然な流れでは、そのうちの一つが、タイミングが来たら排卵し、排卵したタイミングで、卵管内で進入してきた精子と出会い、その精子が運よく非常に元気で、卵の中に進入して「受精卵」になり、その受精卵がタイミングよく発育して、タイミングよく子宮に移動して、子宮の壁に着床すると、妊娠ということになる。

 

自然妊娠が、どれだけ「奇跡」か、お分かりいただけるだろうか。

 

この、日にちの決まらない「排卵」「受精」「着床」を、人工的に行うわけなので、当然、仕事の予定などを考慮することはできない。

 

最初の体外受精周期は、採卵のタイミングと仕事のタイミングが合わずに、たくさんの自己注射と服薬の甲斐なく、採卵にさえ至らずに失敗に終わった。

 

不妊治療のために、仕事を辞める人は多い。というか、辞めざるを得ない人も少なからずいる。

それが「体外受精」というもの

不妊治療と一言で言っても、どんなことをするのか知らない人も多い。

 

採卵が近づくと、友人と何か約束をすることも難しくなる。予定がドタキャンになってしまう可能性もあるからだ。

 

そして、それだけ頑張っても、全く報われることなく延々に続く可能性だってある。

 

ホルモンバランスが崩れて、太りやすくなったり、むくんだり、イライラしやすくなったりもする。

 

場合によっては、長い長い待ち時間がかかるので、採卵だけではなく、採卵までの診察のために、何度も仕事を休む必要が出てくる。

 

それが、「体外受精」だった。
 

 

 

山下 真理子

 

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