※画像はイメージです/PIXTA

笑うことは健康にさまざまな好影響を与えます。本記事では在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長の宮本謙一氏が、「笑いと健康」について、医師の立場から解説していきます。

たくさん笑うと寿命も延びる?大学の研究チームが発表

笑いはとても良い運動であり、ストレスも減り、血圧も血糖値も下がる、動脈硬化も抑制する、ということは、たくさん笑うことでさまざまな病気を予防することができ、元気に長生きできるのではないでしょうか。

 

2019年、「Journal of Epidemiology」という権威ある医学雑誌に、笑いの頻度と死亡率に関する論文が掲載されました。これは、山形大学の研究チームが行った大規模な疫学研究で、山形県の7市の約1万7000人を対象に、最大8年間の追跡調査を実施し、普段の生活における「笑い(大声で笑うこと)」の頻度と死亡率の関係について調べた結果の報告です。

 

そして、その調査によると月に1回も笑わない人は、週に1回以上笑う人に比べ、死亡リスクが約2倍になっていました。いい換えると、たくさん(週に1回以上)笑う人は、ほとんど(月に1回未満)笑わない人に比べて、死亡リスクは半分ということです。

 

この研究では、年齢や性別に加え、がんや糖尿病、高血圧などの疾患や、喫煙、飲酒の習慣など、死亡率に関わる疾患や生活習慣の影響を統計学的になくしたうえで分析しており、「笑いの頻度」が死亡率に関わる独立した要素であることが強く示唆される結果です。

 

たくさん笑う人のほうが心血管系疾患(心臓病)の発症が少ないとのデータも示されており、たくさん(週に1回以上)笑う人たちのグループは、主に心血管系疾患による死亡が減少したため死亡率が低くなったと考えられます。

 

もちろん、「笑いの頻度」が本当に死亡率に大きく関わっているかどうか、この一つの研究結果だけで結論づけることはできません。医学的なエビデンスというのは、複数の信頼できる研究の結果が一致することが必要です。今後、他の研究も含めて医学的データをさらに深く分析し、「笑いの頻度」と死亡率との因果関係を理論的に詳しく究明していく必要があります。

 

でも、たくさん笑うと心血管系の疾患が減り死亡率が減少する、というのは、笑いの医学的な効果を考えると、当然のことではないでしょうか。今後、笑いと健康、死亡率などに関するさらなる研究が行われることを期待しています。

 

医学研究には多額の資金が必要です。開発に成功すると世界中で莫大な利益を生むような新薬の研究には多額の資金が投入されますが、笑いが健康に良いことを証明しても、誰もあまり儲かりません。強いていえば、お笑い芸人の皆さまの仕事が少し増えて、お笑い芸人を多数抱える大手芸能事務所が多少儲かるくらいでしょうか。大手芸能事務所の皆さまには、ぜひ、笑いと健康に関する研究に多額の資金を提供していただき、良いエビデンスが多数蓄積され、笑いが健康に良いという事実が世の中にもっと広まることを期待しています。

 

 

宮本 謙一 

在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき 院長

 

 

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※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅医療と「笑い」

在宅医療と「笑い」

宮本 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

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