(画像はイメージです/PIXTA)

近年では投資を行う人が増えた影響もあるのか、相続時にプラスとマイナス両方の資産が残されるケースが増えています。借金が含まれる相続の手続きには重大な注意点があり、安易な対応をしてしまうと、あとから痛手を被りかねません。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

 

したがって、①の選択肢は正解となります。

 

ただし、不動産は債務と異なり、当然に分割はされませんので、土地などを分筆して分ける現物分割、一方の相続人が全部取得して代償金を支払う代償分割、売却して代金を分ける換価分割、2人が共有で取得する共有分割のいずれかで分けることとなります。

 

借金については前記のとおり、法律上は当然に分割されるということもありますが、貸主の意向もあることから、貸主に無断で勝手に相続人のうち誰が相続するという協議をしても意味がないこととなります。

 

しかし逆にいえば、貸主が承諾すれば、相続人のうちに誰が相続するという協議をすることは意味があることとなります。

 

本件でいえば、自宅兼貸マンションをXさんに相続させることにして、借金もXさんに相続させることにするような場合です。

 

住宅ローンを貸している金融機関としても、物件を全部相続した人が住宅ローンも全額相続してくれたほうが物件からの収入で返済も見込めるし、担保に取っている物件の所有者と借金が同一人に帰属することとなり法律関係が明確になることから、承諾してくれる可能性は高いです。

 

したがって、選択肢②も正解となります。

 

借金を残しておくと、将来トラブルが発生することになるかもしれないことから、残された借金が遺産で支払えるようなケースでは、遺産で借金を返済してしまい、残りの遺産を分けるということも考えられます。

 

本件で言えば、不動産が2億円で、借金が1億円です。不動産を売却すれば借金は返済してしまえますし、売却すれば、代金を2分の1ずつ分けることが可能になるので、どちらが物件を相続するかということで揉めることも無くなります。

 

したがって、選択肢③も正解となります。

借金の相続は、貸主も含めた合意書を交わす必要がある

今回は、すべての選択肢が正解となります。どの分け方がいいかは事案によることとなります。

 

ただし、借金の相続は、話し合いで解決しない場合は、原則に従い法定相続分で相続することとなるということに注意が必要です。

 

また、貸主の承諾がない場合も、原則に従い法定相続分で相続することとなるということも注意が必要です。

 

相続人のうちの1人が、物件も借金も相続することにしたので安心していたら、その相続人が借金を支払っていないことが発覚、しかもこの遺産分配について金融機関の承諾を得ていなかったため、後日ほかの相続人に法定相続分に従った請求が来た…ということが、実際にあります。

 

借金の相続については、貸主も含めて合意書を交わすことが必要です。

 

 

高島 秀行

高島総合法律事務所

代表弁護士

 

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