「家で過ごすことを選んで良かった」と実感できるワケ
在宅療養を支える医師や看護師は、たとえがん自体の治療は困難な状況だとしても、がんに伴う症状の緩和に全力をそそぎます。
代表的な症状である痛みに関しては、医療用麻薬をはじめ、鎮痛剤や鎮痛補助剤を正しい方法で十分量使用することで、強い痛みで苦しむ患者さんを救うことができます。薬を飲むことが難しくなっても、貼付薬や坐薬、持続皮下注などで、在宅でも安全に十分な量の薬剤を投与できます。
もちろん、患者さんの状態が改善し、絶望的な状況から抜け出すことが最善の経過ですが、不幸にして病状が悪化し、意識がもうろうとして苦痛を感じなくなり、最終的に死に至ることもあります。ですがそのとき、愛する家族を失った深い悲しみに包まれるのと同時に、穏やかに眠っているようなご遺体を見ながら、これ以上苦しむことがなくなって良かったとホッとする方も多くいらっしゃいます。
どんな形でがんが進行しようとも、患者さんの耐えがたい苦痛が持続し、悪化し続けるということはありませんし、そういったことがないように私たち在宅医は全力を尽くします。
同様に、家族の方の苦悩や重い介護負担がずっと続くようなことはありません。介護が大変な状況であれば、在宅療養に関わるすべての関係者が最大限知恵を振り絞り、家族の負担を軽減できるよう支援していきます。
どんなにつらい状況でも、つらい時間を抜けた先にある楽しみ、喜び、満足感、笑い(笑顔)は決して忘れたくないものです。
「在宅療養のメリット」を、在宅療養中のすべての患者さんと家族に実感していただきたいと思いながら、私たち在宅医は日々仕事を続けています。そして、在宅療養生活が終わり、患者さんを自宅で看取ったあとに、つらいこともあったけど楽しい時間だった、一緒にたくさん笑えた、とびきりの笑顔を見られた、病院じゃなくて家で過ごすことを選んで良かったと、心の底から実感していただきたいと思っています。
宮本 謙一
在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき 院長
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