残される家族が〝争族〟にならないよう、生前に採っておくべき対策とはなんでしょうか。本連載では、相続における「家族信託」の活用法を解説します。今回は、まず「遺言書」の種類と、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

普通方式、特別方式・・・遺言書にも種類がある

 

トクホの緑茶を飲み干すと、源太郎は団扇で胸元をあおいだ。9月に入り風にはわずかながら秋の気配が感じられるようになったが、冷房を切った部屋で遺言書とにらめっこをしていると、こめかみをタラタラと汗が伝い落ちた。

 

遺言書作成のポイントについては由井からレクチャーを受けた。目をつぶりツクツクホウシの声を背景にその「授業」を思い出す。

 

「まず遺言書には普通方式と特別方式があります。特別方式というのは臨終の際や船で遭難した時など、まさに特別な状況で利用するものですから、ここでは普通方式について説明しますね」

 

源太郎は、その時にとったメモを見直した。

 

「普通方式にも三種類あるんだったな」

「法的効力」を持つ遺言書の作成方法とは?

<自筆証書遺言>

 

●遺言書の全文、日付、氏名を自分で書き、捺印することで作成される遺言

●遺言書の封印も本文に捺印したものが望ましい

●あくまで自筆が原則、ワードプロセッサーやパソコンで書くのはNG

●メリットは遺言の内容や存在を秘密にしておけること。デメリットは紛失や偽造の恐れがあること

 

<公正証書遺言>

 

●公証人役場で二人以上の証人立ち会いのもとに、遺言の内容を口頭で伝えて公正証書として作成するもの

●メリットはその存在や内容が明らかになっているので紛失や偽造の恐れがないこと

●最も確実な遺言書の形式だが、デメリットは作成するのに手間や費用がかかること

 

<秘密証書遺言>

 

●本人自らが自筆証書遺言書を封印し、公証人役場に持参して遺言者と証人が署名、押印して作成

●メリットは紛失、偽造等の恐れがないことと内容を秘密にできること

●デメリットは執行時に検認手続きが必要になること

 

「少し手間はかかりますが、私としては最も確実な公正証書遺言をおすすめします」

 

と言う由井の助言通り、公正証書遺言に取りかかったのだ。書き終えたら近々由井に付き添ってもらって、公証人役場に行くことになっている。

 

「あと遺言執行者も決めなきゃいけないんだったな。一太郎でいいか」

 

そう言って、源太郎は再び便せんに向かい書き進めた。 

本連載は、2015年2月27日刊行の書籍『家族のトラブルをゼロにする生前の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

家族のトラブルをゼロにする 生前の相続対策

家族のトラブルをゼロにする 生前の相続対策

関 博

幻冬舎メディアコンサルティング

平成27年1月、改正相続税法が施行されました。中でも基礎控除の4割縮小により、今まで相続税がかからなかった家族も課税されるケースが増えることが話題となっています。うちの家族は仲がよいから大丈夫、あるいは財産が多くは…

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