「財産管理」は元気なうちに家族に託しておく
社会全体の高齢化が急速に進む中「老老介護」という言葉をよく耳にしますが、相続でも「老老相続」が急増しています。
相続人が高齢化すると、さまざまな法律行為ができなくなり節税策が機能しなくなるケースや、相続人となるはずの子供が先に死去するケースなども珍しくなくなってきました。そのため、あらゆるケースを想定して相続対策を立てる必要性が高まっています。
そんな対策の一つとして近年注目されているのが、元気なうちに家族に財産の管理を託す「家族信託」です。
これまで認知症対策として利用されてきた「成年後見」に比べてかなり柔軟性が高く使いやすいので、老後の不安を解消する方策の一つとして検討する価値は大きいと言えます。
また相続に向けた最終的な備えとしては遺言書が重要ですが、こちらには三つの形式があり、それぞれ作成方法や有効なものとするために満たすべき条件、メリットやデメリットに違いがあります。詳しくは専門家に相談するのがよいでしょう。
遺言書作成の「9つ」のポイントとは?
遺言書は残された家族のためのものです。受け取った人たちが後で困らないようにするため、次に挙げるポイントを押さえてください。
ポイント① 遺言書は公正証書遺言にしておく
遺言の改ざんや捏造防止のためです。
ポイント② 相続人には「相続させる」、相続人以外には「遺贈する」と言葉を使い分ける
相続人が不動産を受け取った時、遺言書に「相続させる」と記してあれば、一人で相続登記することができます。ところが「遺贈する」と書かれていた場合には、相続人全員の印鑑証明書をもらわないと登記ができません。
また相続人以外の人に財産を贈る行為は「遺贈」となります。遺言書に「相続させる」と書いてあっても所有権移転登記は「遺贈」となります。
ポイント③ 遺留分は必ず考慮する
遺留分を無視する場合は、付言事項で理由を書きましょう。
ポイント④ 付言事項で自分の思いを伝える
なぜそのような分配になったのか、相続人に理解してもらうことで無用な争いを防ぐことができます。
ポイント⑤ 遺言執行者(遺言書にそって手続きを行う人)を指定しておく
相続財産は相続人全員の協議により分割されますが、遺言執行者を指定しておけば相続人全員の同意を得なくても相続手続きを行うことができ、遺産分割がスムーズに進みます。
ポイント⑥ 財産の処分法はなるべく財産を特定して指定する
財産を割合で遺言すると、プラスの財産ばかりではなく借金も負担することになります。不動産や動産、金融資産など誰に何を相続させたいのかを明記しましょう。割合で指定する場合には、すべての受遺者(遺贈を受ける人)に対する指定でも、一部の受遺者だけを対象とする指定でもかまいません。
ポイント⑦ 用紙が2枚以上にわたる場合はしっかりと契印を押す
遺言書の用紙の大きさは自由です。しかし、用紙が小さすぎて書ききれないなら、大きな用紙を使い2枚以上にわたらない方が無難です。2枚以上にわたる場合は、用紙と用紙の境に契印を押します。
※なお、遺言書に使用する印は、すべて同じものを使います。
ポイント⑧ 封筒に収納する
遺言書は封筒に入れる必要はないとされていますが、秘密保持や偽造・改ざんを防ぐためにも封筒の利用をおすすめします。封筒には遺言書に書かれている日付・氏名を書き、印を押します。表には「遺言書」「開封厳禁」等と明記しましょう。
ポイント⑨ 財産は漏れのないようにすべて記載する
税務調査では相続財産の計上漏れの有無を必ずチェックします。財産の処分方法を記載する際には、「(特定の財産)以外のすべての財産」と明記し、財産がすべて処分されることを証明しましょう。
[図表]亀山家の遺言書